
こんばんは。ジャンカメ ハンターのぐりやんです。
本日の獲物はYASHICA DSB 50mm F1.9です。もちろんジャンクでの入手です。
YASHICA LENS DSB 50mm 1:1.9 について
このレンズの情報はかなり少ないんで調べてみました。
発売時期は、はっきりとは分かりませんが、ヤシカMLシリーズと兼売されていたこと、中古品はYASHICA FRに装着状態で売られているものが多いことなどからYASHICA FRと同じ1977年に発売されたのではないかと思われます。
1975年に登場したCONTAX RTSで初めて採用されたY/Cマウントでしたが、ヤシカブランドとして初めてY/Cマウントを搭載したのがYASHICA FRなんですね。FRよりも1世代前のヤシカ製一眼レフは、YASHICA FFTで1973年に発売されたM42マウントの一眼レフでした。発売当時としては時代遅れだったFFTの次に発売したのがRTSですから、一気に電子制御化され、まさに時代の最先端にジャンプした感じだったんですよね。しかもCarlZeissで武装してきた訳ですから、恐れ入谷の鬼子母神すねw

説明しよう。RTS以降のCONTAXブランドのカメラはヤシカが製造しており、ヤシカはCONTAXとYASHICAという2ブランドのカメラを製造販売していたということなんじゃよ。そしてこの時代のYASHICA/CONTAXの一眼レフのレンズマウントは共通で互換性があるんじゃ。じゃからY/Cマウントなどと呼ばれるのじゃ。
参考までに、この時期に発売された主要な「マニュアル、AE兼用一眼レフ」を挙げておきます。
- 1973 CANON EF・PENTAX ESⅡ
- 1974 MINOLTA XE
- 1975 OLYMPUS OM-2・PENTAX K2・CONTAX RTS
- 1976 CANON AE-1
- 1977 MINOLTA XD・MINOLTA XG-E
- 1978 CANON A-1・NIKON FE・YASHICA FR-1
YASHICA DSB はM42マウント世代のYASHINON DSをバヨネットマウント化(Bayonet Mount)したものなのでDS+B となったという噂です。そしてこのレンズの製造は富岡光学と言われています。
ちなみに後継のYASHICA MLシリーズはマルチコートですがDSBはモノコートです。

モノコート?
モノコートスキーの皆さん。こりゃ期待できますヨ。

手持ちのAUTO YASHINON-DSと並べてみました。F値がほんの少し違いますが口径はだいぶ違う気がします。YASHINON DSは黄変していますね。実はこのレンズはアトムレンズと言われています。
DSBは黄変がないのでアトムレンズは使われていないんでしょうね。

DSBはYASHINON-DS(5群6枚)の改良型ということなのですが、レンズ構成は異なっていて4群6枚のダブルガウス型となります。YASHINON-DSではF1.7だった開放F値が、DSBではF1.9と少し暗くなっています。どちらもモノコートとなっているわけですが、これはコストダウンやMLシリーズとの差別化のためだったのではと思ってみたりするわけです。4群6枚構成となったDSBは4群6枚スキーの拙者としては嬉しい限りなのです。
4群6枚のダブルガウス型はカールツァイス社のレンズ設計者であったパウル・ルドルフが設計したオリジナル「プラナー」を基としたレンズです。オリジナルプラナーは4群6枚のダブルガウス型だったんですよね。
一眼レフ用のレンズは長いバックフォーカスが必要となるため、4群6枚構成で焦点距離を50mmかつ明るいレンズを設計すると言うのは当時では難しかったようで、2群目を張り合わせず5群6枚としたりさらにレンズを追加して6群7枚構成とした変形ダブルガウス構成ものもがほとんどで、RTS用のプラナーでは6群7枚構成となっていました。一眼レフ用としてはプラナーという名前だけが残り構成はオリジナルとは異なる変形ダブルガウス型となった訳です。RTS用に限らず、コシナのZE,ZFプラナーでも同じような構成となっています。他社の大口径標準レンズでは4群6枚構成を保ったまま、焦点距離を55mmや58mmなどに伸ばしたものも多く見られますね。
どんどん脇道にそれますが、一眼レフのように長いバックフォーカスが不要であったコンタックスG用のプラナー45mmF2や現行のコシナ製プラナー50mmF2ZMなどのレンジファインダー系のレンズはオリジナルプラナーと同じ4群6枚構成を採用しているんですよね。これこそオリジナルプラナーの設計を継承するレンズと言えると思いませんか?ぐぬぬ…コレ欲しいw
状態の確認と修理の方針を考える
さて前置きが長引きましたが、今回入手したレンズを見ていきます。
外観はそれなりにヤレていますが年代を考えれば綺麗な方かなと思います。ピントのゴムリングも問題ありません。ただ銘板を無理やり開けようとしてコジッたような傷があります。前ユーザーが分解しようとして諦めたのでしょうか?YASHINON DS と同じタイプならば、回して開けるんですけどね。そして分解するのに銘板を外す必要はないんですヨ。
前後のレンズエレメントはかなり汚れていて内部もチリが多いようですが、大きな傷やカビは見当たらないようです。
ヘリコイドはグリス切れでスカスカですね。
鏡筒に少しガタがありますねぇ。どこかのネジが緩んでいるのでしょうか?
絞り羽根の作動は良好、油もありません。
ジャンク理由は銘板の傷とスカスカのヘリコイドでしょうかね?
一番の問題点は鏡筒のガタとグリス切れのヘリコイド。
ヘリコイドまで分解して洗浄とグリスアップ、ヘリコイドのガタの原因を究明して是正する。
レンズは状態を見て、どこまで清掃するか決めようと思います。
分解と修理
このレンズ前枠を回すと丸ごと外れるはずなのですが、とても固くてビクともしません。
こういう時に最後の手段として使っているのが「Baby-Boa Constrictor」というストラップ式のレンチなのです。

かなり古いものですが中々強力で、大概のものは回せてしまいます。実はこれでも回らなかったレンズが一つだけあるんですけどねw。対象物との接触面はゴムなんで傷つける心配も少なく、用途は色々なんで一家に一つあると便利ですよ。ジャムの瓶や梅酒の瓶なんかは簡単にあきまっせw
同じものはなかなか手に入らないかも知れませんが、類似品がたくさん出ているので困った時には試してみるのもいいかもしれません。
そのほか苦労したのがマウントを止めている4本のネジです。この件はマウント側を分解するときにお話ししましょう。
ガチガチの前枠を先程の黄色いベルトレンチで外すとプラ製の前玉抑えが出てきましたが、カニ目に思いっきり傷がついていました。しかも、ゆるゆるに緩んでいました。前枠はガチガチに締まっていましたから、前枠を外さずにカニ目を無理やり回したのだと思います。


プラ製の前群押さえの裏にも接着剤がついていました。
前群はユニットごと抜けます。枠の材質はプラッチックですね。
ここから先に進む人は、マーキングしながら分解しないとピント(無限遠っすね)が狂います。


ピントリングの裏に赤いネジロックがついたネジが見えます。これを外すとピントリングが外れます。
次はマウント側から分解しますが、マウントを止めている4本のネジが固くて全く回りません。
またもやネジロックでガッチリと固められていて、かなり苦労しました。

固く締まったネジには品質の良い工具が必要です
こういう時のために準備しておいた世界のKTC製の精密ドライバービット0番は、前回のCANON FD 200mmF4 S.S.C.のマウントネジに負けて先端がダメになってしまいました。高価なので、いざという時の専用品として使ってきましたので使用回数は多分数十回です。このKTCのドライバーはビットもハンドルもダメです。プラスチックにハマっている緩いネジなら使いやすさ満点だと思いますが、金属のカメラに使うには全くお勧めできません。ビット先端は強度不足で形状もダメ、ハンドルは強いトルクをかけると内蔵されているラチェット部分がスリップしてしまいます。
使い勝手と使いごごちは非常にいいんですが、はっきり言って強度が足りません。
しかもビットの別売りは無いだと?もう最低じゃん。どうなっとるんこの会社、まじで。残念です。高かったのに。
そして、信じてたのに…


ドライバーがねじに負けて舐めてしまったので、ネジの頭は若干のダメージが有りつつもなんとか生きていた。
最後の手段、我が家で最強でありまする、謎のドイツ製ドライバーでなんとか外す事が出来ました。
我が家で最強の精密ドライバーとは20年ぐらい前にJapanHobbyTool(以後JHT)で買ったドイツ製の差し替えドライバーですね。長年(使用回数はそれこそ数万回かも)使っていますがビット先端は最強に強靭です。先端形状も完璧で、ネジの頭にガッチリとフィットしてどんなに硬いネジ相手でもへこたれず回してきました。難点はハンドル軸が細くてあまりトルクがかけられないことです。どうにもならない時はプライヤーで強いトルクをかけてきましたがビットの先端は未だビクともしません。結果どんなネジでも開けてきました。
KTCのはハンドル軸が太めでゴム引きなため、手で回すだけでもかなりのトルクが掛けられるのですが、腕力だけでビットの先がネジに負け破損(捻れ)ました。世界のKTCが新しい精密ドライバーを発売したってことで喜び勇んで買ったのに非常に残念です。
この件はいずれKTCに投げかけてみようと思います。
精密ドライバーはPB、KTC、JapanHobbyToolの謎のドイツ製、謎の真鍮軸の精密ドライバーを使っていますが、ランキングをつけるとすれば
1位、JapanHobbyToolの謎のドイツ製(メチャメチャ頑丈)
2位、謎の真鍮軸の精密ドライバー(高バランス高耐久 フジ矢製の可能性が高い)
3位、PB(先端の形状によりフィット感がイマイチ。ネジを傷つけない設計?)
4位、ANEX(先が曲がった。マイナスの0.9だから仕方がないか。)
5位、VESSEL(あのベッセルなのに先が曲がった)
最下位、KTC(世界のKTCなのに先がねじれた)
となります。PBの普通のサイズ(No.3など)は最高なんですけどね。あくまでも拙者の個人的な見解ですが。
JHT謎のドイツ製ドライバーは残念ながら現在は販売されておらず、代わりにJHTオリジナルのドライバーになってるっぽいです。同様の強度があれば欲しいところですが、試しで買うにはお高いですね。
この謎のドイツ製ドライバー、もう一本確保しておくべきだったなぁ。かなり酷使してるんで、いずれ電動インパクトのビットのように先が折れると思います。
実は工具も大好きで色々使ってきたので、その話はいずれ特集しようと思いますw
閑話休題w
絞りリングを外すときにはクリック感のための鋼球とバネに注意します。マウントやらなんやらを外すと直進キーが顔を出しましたので、マーキングをしてから直進キーを外します。


そしてバラバラになりました。白いトレイに乗せてあるのが1枚目(E1)と6枚目(E6)のレンズエレメント。この2枚のみを洗浄します。その他のパーツは、問題なく洗えそうなところのみ洗浄します。


クリーニングなど
いつものように水道水で、じゃぶじゃぶと洗いました。今日洗浄するレンズエレメント(前玉と後玉のみ)には貼り合わせレンズがありませんので熱収縮によるバルサム剥がれの危険性はありませんから、安心してぬるま湯で洗浄できました。この季節は水が冷たすぎますからね。

レンズと一緒に白い小皿にある、茶色い物体は何?

ついでにレンズサッカーの吸盤も洗ったんよ。
レンズサッカーが汚れると、レンズに汚れが着くんで綺麗にしとかんいけんねw



刻印(文字)に詰まった汚れも綺麗にします。ネジ山なども、洗えるところは全て洗いました。


1枚目と6枚目。一見綺麗になりましたが1枚目の裏側にカビ跡のようなものが残ってしまいました。


2群と3群はフレームにハマったままで、お掃除っすわ。ガリ傷が多めだった銘板はプラ製なのでチコっと修正しときました。
ガタの原因
忘れちゃならない鏡筒ガタの原因は、ピントリングの付け根側のネジのクリアランスが原因でした。

アルミ製という事もあり、グリス切れのまま使い続けたため磨耗したものと推察します。
どうにもならないのでグリスアップのみ実施しましたが、ほぼ気にならないレベルに改善しました。
組み立て



綺麗にしたパーツに必要な場所のみグリスアップしながら組み立てます。ヘリコイドはマーキングだらけっすわw。おかげで無限遠調整せずにOKでした。備えあれば憂いなしっすね。
最終チェック

CONTAX 159MMに取り付けてチェックしました。
絞り羽根の動きもバッチリです。(今回は整備してませんヨw)


残念ながら、前玉の裏にポツポツが残りました。しかし透明度は抜群でクモリなし。


この後ボケの感じは、まさに4群6枚って感じです。
拙者の好きなクラシカルなザワボケです。勝手な造語ですw流行らせたいっすねwww二線ボケとは言わせぬw。
コンディション認定
前玉にカビ跡がありますがクモリは無いので、写りに影響ない実用品ってことで「並品」に認定です。
あとがき
YASHICAのY/Cマウントカメラが2台もあるのに純正レンズが無かったので一本欲しかったんですよね。
どうせならって事で、マルチコートのMLではなくモノコートのDSBを狙ってました。拙者の好きな4群6枚ですしね。先日のC.C PETRIも4群6枚でしたね。
いずれ4群6枚撮り比べをやってみたいですね。
そして、Carl Zeiss Planar T*2/50ZMも参加させたい(夢?w)
次回はMD世代のROKKOR標準レンズ、若しくはROKKOR-SI 28mmF2.5の第2次レストア(紫外線照射結果)のどちらかをお送りする予定です。
紫外線照射はすでに丸5日も続けていますw
では、おやすみなさい。
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