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WALZ35|ワルツ商会 初の35ミリカメラは名機だった(と思う)

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ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はWalz 35です。


Walzというブランドはかなり前に絶滅しました。一時はかなり凄いカメラを作っていたのですが某有名シャッターメーカの謀略により…。
そんなワルツ商会が初めて販売したカメラがワルツ35だったのです。
株式会社ワルツ商会は、ワルツ35を発売(詳細不明:後述)した1956年に株式会社ワルツに社名変更したようです
なおワルツについては、未だWikipediaへの掲載はありません。

ワルツ商会

ワルツのカメラを見かける事は稀です。ワルツがカメラを販売していた期間は1952年から1961年の間、約9年ほどしかなく販売台数も限られていたのだと思います。35mmカメラに至っては1956年に発売したWALZ35が最初ですから販売期間は5年ほど、その間に7シリーズ12機種(拙者調べ)の35mmカメラを販売したようです。

ワルツ銘のカメラは戦前からありましたがそれらはいわゆるOEMだったようであり、ワルツ最初のカメラは1952年に発売された2眼レフWAGOFLEXだったと言われています。

その後WAGOFLEXはWALZFLEXに名称変更され、そして1956年ついにWALZ35が発売されたのです。その後も何種類かのカメラを発売しますが、経営は次第に悪化したようです。当時の雑誌等を探してもWALZ35の広告見つける事はできませんでした。コパルの謀略で息の根を云々という話は有名ですが、最後はCanonetに息の根を止められたのではないかと思います。(Canonetに息の根を止められたカメラメーカーは多数存在すると言われています)

その後、ワルツの社長であった太田俊夫氏は小説家に転身されました。「社長最期の日」で語られているのがワルツが倒産に至る話のようですが、この話がノンフィクションなのかは読んでみてご自分でご判断いただきたいと思います。

WALZ35とS Kominar

さて、本題w。
ワルツ35は1956年に発売?とされているワルツ商会初の35mmカメラで、レンズ固定式レンジファインダーカメラです。搭載レンズはS Kominar 4.5cmF3.5です。なぜ?なのかと言うと文献によって書いてある事が違っていたり、雑誌等への広告も皆無ではっきりしないのです。
1956年発行のカメラ年鑑には31年2月つまり1956年2月の記載があります。ところが1975年発行の日本カメラの歴史には1955年7月、例のすぎやま本には1956年とあります。

コミナーは日東光学製レンズで使われたブランドで、このSコミナーは3群4枚のテッサー型です。
35mmカメラとして初めてコミナー銘のレンズを搭載したのは、おそらくワルツ35です。S-Kominarにレンズ構成の手掛かりになるプレフィックス等は無いのですが調べてみるとワルツ35のレンズは3群4枚のテッサー型のようです。ワルツ商会はWalz35を皮切りに次々に新型カメラを市場に投入する事になるのですが、次第に経営は悪化し、1961年には倒産し工場設備などはコパルに渡ってしまったそうです。

ワルツ35のレンズ構成図は発見できませんでしたが、後継機のワルツ35-Sに搭載されていたS Kominar 4.5cmF3.5も同じレンズだと思われこちらは構成図が見つかりました。(分解したところレンス構成は同じですが形状は異なっているようです)
搭載シャッターはCOPAL-MXです。前に整備したTaron35についていたNKS-MXと同じようなシャッターでMXF接点に対応しておりセルフタイマーを搭載しています。調べてみると国産初のMX接点を搭載したシャッターだったらしいです。
ネット上にワルツ35のレビューは少ないですし、資料等も見当たらず謎が多いカメラなのですがこのカメラを見て個人的に驚いたのはファインダーなのです。倍率が高く、おそらく0.75倍ぐらいあるのではないかと思います。(調べてみたらやっと資料を発見し0.78倍だということが判明しました。これはすごい!)そしてアルバダ式ブライトフレームを搭載しているところも驚きました。この時代に倍率の高いをファインダーをコンパクトカメラに搭載した例はおそらく無い気がしますし(後ほど調べたら数機種存在しました)ブライトフレームの搭載は当時としては先進的だったと思います。一見フツーのカメラですが、ファインダーにとても力が入っているカメラだと思いました。
アルバダ式ブライトフレームの搭載について調べてみましたが、国産カメラで最初に搭載したのはNikon S2(1954)だったようです。その他見つかったのは高級機と言われるTOPCON35B(1955)や35S(1956)、BEAUTY35 Super(1956)KONICAⅢ(1956)など同年代のカメラたちでした。ちなみに世界で初めてアルバダ式ブライトフレームを搭載したのはZeiss IkonのCONTAFLEX(超高級35mm二眼レフ)で発売は1935年でした。
採光式ブライトフレームについてはかの有名なLeica M3(1954)に世界で初めて搭載され、国産ではAires35Ⅱ(1954)が最初でした。

状態確認

このカメラの巻き上げチャージ機構は独特な作りで、後年のトイカメラのようなシーケンスでチャージされます。

二重写し防止を解除するにはスプロケットを指で回すかダミーフィルムを使う

巻き上げレバーはフィルムを巻き上げる役目と巻き上げの最後付近でシャッターをチャージする役目を担っています。小刻み巻き上げが可能っぽいのですが小刻みにレバーを動かすとフィルムだけが進んでシャッターはチャージされません。(どこか壊れているかもですが)自動巻き止めと二重写し防止はスプロケットが担っていてスプロケットは巻き上げレバーとは連結されていません。つまり巻き上げ操作をしてもスプロケットは回転しないのです。フィルムによりスプロケットとスプールが連結されるのです。ですからフィルムを入れていない状態で巻き上げるとシャッターはチャージされますがレリーズボタンは二重写防止機構でロックされたまま押すことはできません。

二重写防止はスプロケットを指で止まるまで回す事により解除されますからシャッターの空撃ちは可能です。
シーケンスを理解したところでダミーフィルムを入れてテストしてみると巻き上げレバーがゴリゴリ言いながらスリップします。巻き上げのラチェットがすり減っているようで巻き上げ出来ません。
ファインダーはガビとクモリのオンパレードで見えが悪いですが、ハーフミラーの蒸着は大丈夫そうです。そして問題なのはファインダーを覗いた際、視度が全く合わず全体がぼやけてしまっていることです。これはどうにも遺憾です。調整することができれば良いのですが。

レンズはなんだか内部に水滴が付いています。おそらく水ではなくオイルだと思います。過去に誰かがオイルを流し込んだのではないかと思います。

そしてライトで照らすと内部に傷やらクモリやらかなり酷い状態だった。
賢明な皆様はカメラにオイルをぶっ込むのは絶対にやめてくださいね。

そんな訳で

  • 巻き上げスリップ
  • ファインダーのカビとクモリ視度が合わない問題
  • ピント環(ヘリコイド)の動きが少し渋い
  • レンスのクモリと水滴

をなんとかする必要がありそうです。

分解に苦労す!

このカメラを分解するにあたり情報収集すると巻き上げレバー中心にある(貼り革の下)ネジは逆ネジであることがわかりました。しかしどうやっても回すことが出来ないのです。回そうとすると少しだけ緩むのですがそれ以上は回りません。締めると少しだけ締まるのですがそれ以上回りません。

どうにもならないので力一杯回すとネジの頭が折れて取れてしまいました。ネジを破壊した訳です。
それでようやく巻き上げ軸の止めネジを外すことが出来たのですが、外してみてもみても何故回せなかったのか分からないのです。
しかしネジ部分をよーく観察することで理由が判明しました。

構造の模式図赤いステルスネジが純正加工ならこのカメラ奴婢破壊分解は困難である

中心にある巻き上げ軸の止めネジ(上図黄土色)に穴を開けてネジを切りそこに細長い止めネジ(上図赤色)をねじ込んで頭を削り落としてあったのです。

写真を撮っておけば良かったのですが、後の祭りですね。

止めネジには何の変哲も無く逆ネジであることは確認済みだった

まあ簡単に言うと分解できない構造だったと言うことです。

ステルスネジを抜き取った後の状態
巻き上げノブを裏側から観察
取り出した止めネジ(上図:黄土色)にはドリルの切削痕があった

もしかしたら改造品だった可能性もありますが、外観からは全く分からないように加工してありましたので、これが製造時の標準的な加工であるとすれば、このカメラは巻き上げレバー中心のネジを破壊しない限り分解できませんのでご注意ください。

巻き上げスリップの修理

巻き上げ部分のいわゆる自動巻き止めを実現している機構部分はかなり独特な設計でした。一見小刻み巻き上げに対応してそうですが、小刻みに巻き上げるとシャッターはチャージされませんのでちょっと不完全、欠陥と言ってもいいかもしれません。

そしてこのラチェット部分の爪が摩耗して滑っていましたので、不本意ながら丸まっていた部分をヤスリで削って尖らせました。できれば削らずになんとかしたかったのですが削る以外の方法がありませんでした。

丸鋸状のギアの方も削れたカスとグリスが固まったようなものがギアの奥に挟まって悪さをしていたようなのでギアを掃除しました。これでまあ簡単にスリップすることはないでしょうが力を入れて巻き上げるとまたスリップしてしまう事も考えられるような作りなので優しく巻き上げる必要がありそうです。

ファインダーのカビとクモリと視度が合わない問題

クモリとカビに覆われたファインダーを掃除します

ファインダーがこれまた独特の作りでした。

丸い筒に接眼レンズと対物レンズがある 接眼レンズには四角い板ガラスとアルバダ枠とが見える

対物レンズと接眼レンズが一体になっておりその先にビームスプリッターがあります。

接眼レンズ。対物レンズ。ビームスプリッターがアッセンブリーになっている

つまりビームスプリッターより先にレンズは無いという合理的な作りです。

ファインダーアッセンブリーを取り外すと保護ガラスがあるだけ

カメラを正面から見てファインダーの対物レンズに見える部分と距離計窓にはガラスが入っているだけです。こんな作りは稀にしか見ませんね。軍艦部を開けるとファインダーにカバーなどはありませんから簡単に掃除できます。ビームスプリッターの蒸着面があまりにも汚いのでどうしても拭きたくなりましたので隅っこの視野に関係ない部分を少し擦ってみると簡単に蒸着が剥がれましたので掃除は中止しました。

接眼レンズは接着してあっただけなので組み立ての調整でファインダーの視度を変更する事ができた

ファインダーの逆ガリレオ部は金属の筒に対物レンズと接眼レンズが差し込まれているような構造で対物レンズの周辺にはアルバダ枠の反射面が蒸着してあります。接眼レンズは板ガラスと片凸レンズがバルサムで接着してありその間にアルバダ枠が蒸着してあるようです。接眼レンズの枠は筒に接着してありテレスコピック形状でしたので、接着剤を剥がして接眼レンズと対物レンズの距離を変更して再接着することにより視度を変更することができました。これでファインダーの見え具合を大幅に改善することができた訳です。ラッキーw。

レンズ内の水滴

まあ水滴というよりも油分でしょう。水なら蒸発しますからね。なぜこんなことが起こるのか不明ですが、シャッター羽根や絞り羽根に油の付着はありませんでしたから、人為的なものではなさそうです。構造を見たところレンズのみを取り外す事は出来なさそうだったので、レンズボードを取り外す必要があると判断しました。その為には貼り革を剥がさなくてはなりません。でもワルツですから嫌な予感しかしませんね。前回のWAGOFLEXのこともありますからあまりやりたくないのです。

そして、貼り革をキレイに剥がそうと必死に頑張ったのですが、やはりボロボロになりましたので諦めてゴリゴリと削り落としました。レンズボードを外すとレンズシャッターユニットをはずすことができましたので、レンズシャッターユニットから後玉を取り外してみました。
状態は最悪で過去に雑にクリーニングされたのかキズみたいなものも多数あるようです。致し方ないので酸化セリウムで多少研磨しました。

そして拡大してみると、表面が腐食していますね。

デジカメで試し撮り

自作アダプターとヘリコイド付きマウントアダプターでデジカメに装着

あまり研磨するとレンズ面の曲率に影響しそうなので程よいところでやめてデジカメにマウントして試し撮りしてみると、

予想していたよりかなりシャープに写ってビックリ

意外とキレイに写りました。

こういう感じであればキレイなボケである(イイねー)

レンズの状態が悪すぎて修理テンションは奈落の底まで落ちていたのだが、写りが良いのでテンションが回復きしてきた!

ボケは個性的でテッサー型っぽいと思った(イイねー)

レンズの状態は最悪だけど、遊びで撮るぐらいなら大丈夫そうな気がしてきましたぞ!

開放ではかなりの周辺光量落ちがある(イイねー)

これなら十分遊べそうだ!って事で、できるかぎりの整備を実施して再組み立て、貼り革も新たに製作して貼り付けました。貼り革の製作などはYouTubeをご覧くださいませ。

あとがき

ぐりやん
ぐりやん

最後まで読んでいただき感謝です。
これはレンズの傷みがひどいのでジャンク品としか言いようがありません。もうやる気をなくして最後の気力を振り絞りデジカメにマウントして撮影してみたら思ったより、いや、予想よりかなり良い写りでした。なので完成させたのです。
WALZ35ではレンズ内に曇りがあるものが散見されますのでレンズが無事なものは少ないと思います。中古品を購入される場合は十分ご注意いただき、つかまされることの無いようにしていただきたいと思います。

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