ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はワゴーフレックスです。ケースと元箱付きで外観は美品といっていいレベル。
買った時の写真を撮るのは忘れましたw
WAGOFLEX(ズイコー付き)
ワゴーと言われても聞きなれない名前ですが実はワルツ商会が製造したカメラだそうです。ジャンルで言えば普及型の2眼レフカメラなのですが、レンズはオリンパスのテッサー型であるズイコーを搭載しているしシャッターはコパル を搭載しておりツボを押さえているカメラだと言えるでしょう。当時(1953年)の某誌によると普及型のカメラで唯一、シャッター耐久試験が合格点であったと評されている。
発売当初は日東光学製の3枚玉コミナーを搭載していたらしいですが、途中で4枚玉のズイコー付きが追加されたそうです。前板焦点繰り出し式(全群繰り出し)ですから画質も期待できますね。
状態
めっちゃキレイです。しかしシャッターは動きません。
そしていちばんの問題はピントが固着していること。ピントノブがびくともしません。
この症状はワゴーフレックスの持病らしい。しかもとても頑固らしく、修理を諦める人も多いようです。
さてこのひどいシャンカメを復元することは出来るのでしょうか?
ピント機構の固着をなんとかする
まずはピントが固着している原因を探ります。ググると左右の繰り出しカムを繋ぐ軸が固着するようで、どうやらミラー下に軸が見えるらしいです。そこで、ファインダーを分解しミラーを外してみることにしました。

すると例の軸が見えました。劣化し変質したグリスであろう白いものの付着が見えます。これは貼り革を剥がして両サイドから攻める必要がありそうです。
第一関門:両サイドの貼り革をなんとかする
先ずはノブを外します。

フォーカスノブは2本の止めネジを完全に抜いてから反時計回りに回せば抜けます。

巻き上げノブはワンウェイクラッチが故障していましたのでフィルム室から軸を固定して反時計回りに回して外しました。スプリング式のワンウェイクラッチは無理に逆回転させると壊れやすいので注意です(中判カメラではここが壊れているものがかなり多いのです)
そして貼り革ですが、これがなかなか剥がれません。貼り革ではなくライカのグッダペルカのような樹脂を流し込んだようなもののようです。

キレイに剥がすのは諦めて削り取ろうとしましたが、これが硬くてなかなかうまくいきません。で、ボロボロになってしまいました。

側面の蓋はアルミ製で強度が低く取り外すと曲がってしまいました。


そして両サイドの内部から攻めようとしましたが、固着が酷すぎて全く歯が立たず、全く回すことができません。うーむ。前から攻めてみます。
第二関門:前面の貼り革をなんとかする
この貼り革がサイドとは違い紙の上に樹脂の貼り革を張ったようなタイプ。

ボロボロと破壊しながら剥がしたけれど、紙だけが残ってしまうという具合ですわ。

机の上はパーツと粉々になった貼り革で大変な事に。そして前からも歯が立ちませんでした。
第三関門:ミラー裏から変質したグリスをなんとかする
ミラー裏からなんとかするほか無いようです。色々な有機溶剤を試してみますが、変質したグリスが溶けることはありませんでした。

しょうが無いので、この窪みに灯油をブッ込んで数日放置してみることに
そして1日目。全く変化は無い様子。少しだけ変質グリスが解けたかな?って程度

さらに1日放置。しかし目立った変化はなく、我慢できなくなり破壊覚悟でプライヤーで軸端を掴み力尽くで回す。もちろん始めは傷を付けないようにソフトタッチプライヤーで挑戦してたんですが
どうしても滑ってダメだったので意を決してバイスプライヤーで軸端をガッチリ掴んでオリャッと回す。
いわゆる最終手段!ですな。軸が折れたら終了ですが…
(通常バイスプライヤーをカメラに使ってはいけません。真似して折れても拙者は責任とれませんよ)と?

キター♪───O(≧∇≦)O────♪
やっと外れました。軸端ノブがハマる部分に少しキズがついたけれどこれなら問題なさそう。


これでやっと両サイドにある繰り出し機構も分解整備することができました。完全にグリスが変質して固着していました。
CLA(Clean,Llubricant,Adjust)

貼り革の破片は大変なことになっています。

フォーカスの部のストッパーが変形していました。折らないように気をつけて修正します。


巻き上げノブの逆回転防止バネが折れグルグル回りますので修正しておきました。
レンズ内には何らかの物質が結晶化していますねぇ。


とにかくバラしてクリーニングします。

そこそこキレイになりましたが残念なことにクモリは残りました。

前板カバーに残った紙は鍋で煮込み剥がしました。

シャッターはコパルの無印でプロンター型ですね。要所に微注油しておきます。

フォーカススクリーンもクリーニングしておきました。


そこそこキレイな革ケースが付いていましたが縫い糸が劣化してプツプツと切れましたので縫い直しておきました。
最終チェックとコンディション

残念ながらレンズのクモリが残りましたが、そこそこキレイになりました。固着していたフォーカス機構はスムーズになりシャッターやその他の可動部分も全て快調に動きファインダーもキレイです。
唯一残る問題は外観ですね。サイドの貼り革がボロボロのままです。剥がすのは非常に大変なので一旦諦めましたw。前の貼り革は粉々になって全てなくなってしまいましたが、3DプリンターとTPU樹脂で作った貼り革もどきを貼り付けました。なので限りなくジャンクに近い「難あり品」でしょうね。
あとがき
このカメラのピント固着の持病、ナメてました。フォーカス軸が完全に固着したものを購入するのは全くお勧めできません。ほんとに固く固着しており、どんな洗剤や溶剤でも溶けません。(強アルカリと強酸はは試していません)拙者は灯油を流し込みましたが灯油でもほとんど溶けません。アルコール、アセトン、シンナー、洗剤など何を使っても溶けませんでした。
そしてこのカメラは整備性が最悪です。前板を外すだけでも一苦労します。設計がク◯過ぎます。とにかく酷い設計で分解組み立てするのが非常に大変なのです。
このカメラの整備はかなり高難度ですからチャレンジする方は覚悟して臨んでください。

最後まで読んでいただき感謝です。
中級機だけれど、シャッターとレンズは上級機並みの魅力的なワゴーフレックスです。安くてキレイな個体を手に入れて喜んでいたのですがキレイにばらすことは叶わずボロボロになってしまいました。全ての貼り革を剥がして再作成して貼り付ければ良いのですが心折れました。
いつか気が向いたら貼り革を削り落として張り替えるかも知れません。
コメント
こんにちは 突然のメールをお許しください。
二眼レフに興味を持ちワゴーフレックスを購入しました。軽いきもちで中古を購入したのですが、あちこち不具合があり分解をと考えておりましたところネットで拝見して大変参考になりました。細かな部分まで説明されており助かりました。やはり仰せのとおりフォーカシング機構が固着して頑固です。前もサイド(片方だけ)も上も後ろも外しましたが、もう片方のサイド板は外れず肝心の軸を引出したいのですが付いているノブが外せません。ノブの張革も剥がしてみましたが手がかりがわかりません。フィルム巻上げノブの方と合わせて外し方を教えて頂だけると助かります。
たくお願いします。
こんにちは。コメントありがとうございます(^ω^)
さて、うーんと…サイドというのは、フォーカスノブがある側って事ですよね?
まずフォーカスノブは2本の止めネジを完全に抜いてから反時計回りに回せば抜けるはずです。フォーカスノブの2本の止めネジはストッパーを兼ねているので緩めるだけではダメです。無理に回すとストッパーピン(根元が弱いです)が折れてしまうかもしれません。
フィルム巻上げノブも反時計回りに回せば抜けますが、そのまま回すとスプリング式のワンウェイクラッチ(ブログ内では巻き上げノブの逆回転防止バネと説明してるやつ)が折れてしまう可能性がありますから、フィルム室内の軸を固定した状態で巻上げノブを反時計回りに回すのが良いと思います。
写真を追加しておきますのでご参考ください
ではまた、遊びに来てくださいね〜