ZeissIkon SuperIkonta 530
SuperIkonta530は日本ではスーパセミイコンタIと呼ばれるセミ判(645)のカメラです。
530の後に/16 とか /2 が付くと別のカメラになるので注意してくださいね。
/16 が付くと6x6判になり、 /2 が付くと6x9判になるぞ。
このカメラはスーパイコンタシリーズの最初の製品で、1934年発売です。
530と531の最初のモデルだけ搭載レンズの焦点距離が70ミリ、その後は75ミリとなり前蓋が分厚くなります。
中判カメラではありますが、驚くほどコンパクトで、なんとかズボンのポケットに収まりますよ。
独特の格納式ドレイカイルプリズム機構を持つ距離計が内蔵されており、ドレイカイルプリズム部を引き出した姿は、なかなかカッコいいです。
イコンタ531シリーズに比べると、黒塗装基調な外観でメッキ部分が少なく、ニッケルメッキであるため見た目がかっこいいです。(主観です)
シャッターの表示はCompurですが、中身はCompur Rapid CR00というタイプのシャッターが搭載されております。外径45mmほどの非常にコンパクトなシャッターで高速側は1/500まである高性能なシャッターです。
この個体はシャッターユニットにシンクロ接点が、ボディにアクセサリーシューが追加改造されています。
状態を確認する
レンズ展開ボタンを押しても全く反応ありません。前蓋の足を引き出して引っ張ると前蓋が開きました。ファインダーも手で開けたら開きましたが、前レンズが起き上がりません。多分壊れてる。
ドレーカイルプリズムは若干動きが悪いですけど、引き出せました。
(youtubeで確認したら展開ボタンを押すとレンズが飛び出してファインダーも展開される様です)
気を取り直して、展開状態で外観を再度見てみます。
レンズはひどく曇っていてカビもあります。
一番気になる蛇腹の状態はまあまあキレイで穴もなさそうです。古いのにすごいなー
- 外観は結構痛みがあります
- 前蓋がちゃんと閉まりません。
- 貼り皮の剥がれと欠損は微小です。
- レンズ、ファインダーの展開がスムーズではありません。
- レンズはクモっています
- 前ファインダーがだらしなく、綺麗に起きません。
- レリーズレバーがなんか変です。
- スローシャッターが不安定です。
いやー盛りだくさんですね。
分解整備
状態を確認したところでレストアを開始します。
だらしないファインダー
このカメラはレンズ展開ボタンを押すとレンズがシャキーンと飛び出してくると同時にファインダーがバイーンと起き上がるはずですが、前ファインダーが情けなくうなだれていてシャッキっとしません。
これにはどうもモヤっとしますので、ここから着手します。
分解するにはヒンジ部分のピンを抜く必要があります。
と、すでに分解してばねを取り出しました。
バネの片側が折損している様です。
バネを1巻分ほどいてレンズが立ち上がる様にしてからピンを打ちこんで元に戻します。
レンズ展開ボタンを押すと、ファインダーがシャキーンと立ち上がるようになりました。
しかしファインダーの閉まりが悪く、開きも悪い。どうやらこの真鍮のネジが純正品ではなさそうで、ネジの頭が分厚すぎるのです。
ネジの頭を削ってみました。良さそうです。開きが悪いのもファインダーを引っ掛ける爪を調整したら良くなりました。逆ハの字を解消したらファインダーのボヤけもなくなりました。
前蓋ロックの爪
ファインダーのシャキーンは良いんですが、本来レンズ展開ボタンですから、ポチッとするとレンズがヌルッと出てこなくてはならないわけです。ところがレンズがヌルッとどころか、レンズがきちんと閉まりません。
ですので、前蓋のロック部分を調整していきます。
この辺をちょこちょこと弄ります。
あとはタスキの可動部にちょい給油で、展開ボタンを押すとファインダーが展開すると同時にレンズがせり出してくるようになりました。
レンズシャッターユニット
レンズシャッターユニットを本体から分離します。裏側からカニ爪リングを外すだけです。
すでに取り外しちゃってますが、まず目立つのはシャッターレバーがブラブラしているんです。
なぜシャッターレバーがグラつくのか?観察してみるとどうやらこのバネが折れている。
そしてシャッターレバーには不自然な穴が。これは多分?!
ネットで画像検索して確認してみます。どうやらバネの先端がこの穴に差し込まれていたようです。
バネがの形状を予測してジャンクバネを曲げていきます。
シャッターレバーのぐらつきは解消できましたので、こんなモンでしょう。
シャッターからレンズとドレイカイル部を分離
低速シャッター不安定ですからスローガバナを目指します。シャッターにアクセスするには、レンズとドレイカイルプリズムを連動させているギアを取り外さなくてはなりません。マーキングは必須ですね。
レンズはテッサーですから3群構成、なので3つに分かれます。
クモッてますね
シャッター開放|スローガバナ摘出・洗浄
低速があやしいのでスローガバナを目指します。
シャッターの内部です。コンパクトで精巧なシャッターです。
ガバナーを取り外して洗浄して、元通り取り付けると低速は安定しました。
シャッターメカは微少量注油して組み立てます。
組み立ててシャッター整備は終了です。
ゴミが溜まってそうなので、ドレイカイル基部を外してシャッターの裏側も掃除しました。
ドレイカイル基部はレンズシャッタをサンドイッチする様に取り付けられています。
自作の不恰好なスプリングが見えていますね。
レンズのクリーニング
汚いレンズも洗浄したらきれいになりました。コーティングが無いので綺麗になります。
キズは少しありますが製造からの年数を考えれば極上レベルかと思います。
ピントと距離計の調整
最後にボディに取り付けてピントの確認です。
オーバーインフでしたのでペーパーシムを作成し追加しました。
黒い2枚とレンズの文字が見えるのが元々ついていたやつです。
「引受」「レンズ」 などの文字が見えるので、カメラ修理屋さんの受注票でしょうかね?
少なくと最近eBayあたりから日本にやってきたものではなく、かなり昔に日本にやってきたことが伺えますね。
距離計も分解して調整しました。距離計の無限が少しズレています。所謂横ズレですね。縦ズレもあります。横ズレは、歯車の噛み合わせをズラせば行けそうですが縦ズレは?研究します。
ドレイカイルを展開するとわずかに傾いています。根本の部分なんだかおかしなキズが多く不自然です。折損の可能性がありますね。
画像検索するとやはり折損しているようです。
格納式ドレイカイルを左右に動かすと像が縦に動きます。取り敢えずここにスーパーxを盛ってスペーサー兼ダンパーとしました。これで、縦ズレは解消、横ズレも歯車をズラしたら無くなり無限遠でも像は気持ちよく一致するようになりました。
最終チェック
問題点は全て改善しました。
ジャンクなスーパーイコンタ530でしたが、何とか復元できました。
レンズが思ったより綺麗になったので、写りも期待できますね。
終わりに
カメラは距離計が独創的で興味深いですねカメラですね。
531からは、ボディにシャッターボタンがついて、二重露光防止機構、アルバダ式ブライトフレームファインダーなどが搭載され大幅にバージョンアップしたらしい。物欲が(汗)
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