このレンズを見た瞬間に気が滅入っている、ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はシグマの超望遠4倍ズームラムダ2です。
焦点距離は75-300mm、マウントはオリンパスOMです。
SIGMA ZOOM -λⅡ 1:4.5〜5.6 f=75~300mm
ズーム倍率4倍望遠端300mmを誇る超望遠ズームです。それでいてかなりコンパクトだと思います。
サイズ的には200mmクラスのズームレンズと変わりませんからね。
ネット上の情報によると11群13枚構成なようです。トリオカム方式と謳われていますので3群ズーム方式ではないかと思いますが、分解して確認してみましょうかね。
状態の確認
滅入っている原因は、このレンズとにかくカビが酷い。もう他のレンズを近づけるとカビが移りそうなレベルですw
そしてどうやらバルサム切れが発生しているようにも見えます。カビが酷すぎて見えにくいですが、多分バルサム切れです。しかも剥がれたバルサム内までカビの菌糸が伸びているように見えます。
多分コーティングもダメでしょうが、バルサムまで逝ってますか。こりゃかなりの重症ですわw
内蔵フードは変形しています。直進ズームですが自重で下がってくるぐらいスカスカ。ピントもゆるゆるです。
分解
このレンズはカニ目が見えていなくて吸盤オープナーなしでは分解困難です。
では順に分解していきます。ズーム第1群は2群構成で2枚目は貼り合わせでした。バルサムは無事です。
第1群のカビが酷いですが第2群もカビてます。
ズーム第2群が見えました。これも酷いカビです。
第2群は2群3枚構成で2枚目が貼り合わせでした。ここもバルサム切れはない。あれ??11群13枚ってことはもう貼り合わせはないはず。
ズーム第2群はレンズ周りのシマシマ部分を吸盤オープナーで回すとユニットで外せました。その奥にズーム第3群の前玉が見えましたがこれも酷い
ピントリングの固定はテープ式でした。後年はこの方式が増えるんですよね。
そしてOMの文字を発見しました。懐かしのペイントマーカーで書かれているようです。誰が書いたのでしょうかね?
マウントも取っ払ってやっとカムスロットにアクセスできました。
まずは第2群のカムを抜いてスライドユニットを抜きます。
第2群の接触面は鏡面仕上げでグリスは付いていませんでした。こんなのは初めて見ました。
続いて第3群も抜き取ります。後玉まで丸っと第3群なのですね。
こちらも鏡面仕上げでとってもスムーズにスライドします。
ズーム第3群は絞りを挟んで前に1群あとは絞りよりも後ろにあるようです。
これは何なんでしょうか?プラスチックでつや消しコートした感じ。触ってもとれません。
何でこうなるの??
ズーム第3群の前玉をユニットで外すと絞り羽根とその奥のレンズエレメントが見えました。これがバルサム切れに見えた玉ですね。しかし貼り合わせレンズはもうないはずなのですよ。これは一体・・
あとはどうやら後ろからしかアクセスできなさそうなので後ろから攻めます。
しかしここからの分解写真をなぜか撮っていませんw。キレて一気に分解しちゃってましたw
クリーニング
酷いのはズーム第3群の1群めと2群めでした。
これが1群目なのですが、こんなに酷いのに綺麗になっちゃいました。ははは。こんなこともあるんですねえ。レンズの表面に何らかの成分が蒸着してそれが一面綺麗にカビていたと思われます。
何らかというのは実はオイル成分では無かったのです。水で綺麗になりましたから。一体何が付いていたのでしょうか?それともカビが何か水溶性の物質をレンズ表面に作り出したのでしょうか?謎です。
そしてこれが最恐の2群目。バルサム切れに見えていたやつです。カビがはびこっている部分は盛り上がって濁っています。
カビはすぐにキレイになりましたが、盛り上がったレンズ上に蓄積している物質は、うちにあったあらゆる有機溶剤や洗浄剤でも解けず、ちょっと爪でこすってみると少しずつ剥がれたのでこれはカルシウムか何かと思い、強酸性のサンポール、強アルカリ性の漂白剤さらにはペイント剥離剤も試しましたがダメでした。
そして最終手段の酸化セリウムでの研磨により簡単に剥がれました。どうやらカビがコーティングを腐食させてソレが何らかの物質に変化して固まっていたのではないかと思います。ガラス自体も少し腐食しているようでした。白く見える部分はコーティングがある部分となくなった部分の境目です。
この後もう少し頑張って磨いたらもう少しだけ綺麗になりました。
組み立てたズーム各群です。こう見るとかなり綺麗になったでしょうw
あとはグリスアップしながら元どおりに組み立てました。
最終チェック
いつもは整備前に試し撮りはしないのですが今回のレンズはあまりにも酷いので整備前に試し撮りしていました。
霧か霞かはたまた黄砂なのかってレベルですが実はカビですw
いやー。これは使えるレベルになったのでは?
いや予想以上に回復していました。まあ腐食レンズの表面は肉眼でもデコボコがわかるレベルの痛み具合ですから被写体によっては歪みが出るかもしれません。
コンディション認定
撮れはしますが完全なるジャンク品に認定です。修理するにはレンズエレメントの交換が必要です。
あとがき
今まで取り扱ったレンズの中でトップクラスに酷いカビでした。11群全てカビていましたからね。
しかし撮影できるレベルまで回復するとは思いませんでした。75mmはイマイチですが300mmは結構シャープに撮れてびっくりです。
最後まで読んでいただき感謝です。
さて次回は1987年に発売された、どんなカメラもAFカメラに変えてします夢の望遠ズームレンズをレストアしていこうと思います。乞うご期待w
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