ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物は、なんと泣く子も黙る2眼レフの雄、Rolleiflex Standardです!
もちろん不動のジャンク品ですよ。でもとってもキレイな外観です。こんなにキレイなローライフレックススタンダードには滅多にお目に掛かれませんよ!これがジャンクとは驚きを隠せません。
ローライフレックスは、ドイツのローライウエルケ・フランケ・ウント・ハインデッケ社が製造した中判カメラブランドの1つです。(2眼レフの他1眼レフのモデルも存在します)レンズには、多くの場合、シュナイダー(Schneider)のクセナーやカールツァイス(Carl Zeiss)のテッサー、プラナーなどの高品質なレンズが搭載されており、その光学性能はいつの時代も高く評価されているものばかりです。そして、耐久性や使いやすさ、そして高品質な写真を撮影できることで、多くの写真家や愛好家に愛されてきた長い歴史を誇るカメラなのです。
ローライフレックスの中でも世界初の2眼レフ(Twin Lens Reflex:TLR)方式のカメラは、1929年に登場したローライフレックスオリジナルといわれるモデルです。
2眼レフとは、カメラ上部にファインダーとビューレンズ(ピントを合わせたり構図を決めるレンズ)があり、下部にはフィルムをセットするためのスペースとテイクレンズ(撮影用レンズ)、つまりレンズが二つあるのが最大の特徴です。ローライフレックスオリジナルで使用するフィルムは117という規格の世界初のブローニーフィルムでフレームサイズは120のローライフレックスと同じ6x6だったそうです。しかし現代では117フィルムは入手出来ません。(117フィルムについての詳細は勉強不足ですw)
そして、1932年に発売されたローライフレックススタンダードこそがローライのカメラで初めて120フィルムを使うカメラとなりました。その後120フィルムを使うローライフレックスシリーズは2000年代初頭までの70余年の長きにわたり製造されたのです。ローライフレックススタンダードは、数回のマイナーチェンジが行われ1983年まで製造されました。
ちなみにローライフレックススタンダードが発売された当時の120フィルムの裏紙には6x9の枚数しか書かれておらずローライフレックスでは120フィルムを6x6版で使用していました。裏紙には6x9の枚数表示しかなかった為、自動巻き止めを開発する必要があったんですね。つまり6x6を最初に採用したのもローライで、6x6はローライ判と言われる所以でもある訳です。
Rolleiflex K2 model622
拙者は入手した個体は16xx,xxxのシリアルや特徴から1935年に製造された「Rolleiflex K2 model622」というモデルだと思われます。K2ってのがスタンダードを表す記号のようです。
その他、各タイプの特徴は下表を参考にしてください。
モデル名 | 製造期間 | テイクレンズ | シャッター | 生産台数 |
620 | 1932-1934 | Tessar75/4.5 | 1-1/300 | 4926 |
621 | 1932-1934 | Tessar75/3.8 | 1-1/300 | 38248 |
622 | 1932-1938 | Tessar75/3.5 | 1-1/500 | 51894 |
テイクレンズ(撮影用レンズ)にはCarl Zeiss Jena Tessar 7.5cm F3.5、ビューレンズ(ファインダー用レンズ)にはHeidoscop-Anastigmat7.5cm F3.1(おそらくOAS製)が採用されています。
OASについてはこちらをご覧ください
入手時の状態
入手はもちろん格安ジャンクですが、外観は極上と言える状態です。普通の人から見ればボロいカメラと思われるでしょうが、こんなにキレイなローライフレックススタンダードを市場で見かける事はあまりないでしょう。貼り革は完全にオリジナルで銘板の状態もかなり良いです。このカメラはファインダー内に水準器が取り付けられているのですが、フレーミングには邪魔なので取り外されているモノも多いのですが、オリジナルのまま残っています。
弄っているとジャンク理由と思われる2箇所のトラブルを探知しました。まずはシャッターがスタックしていてチャージもレリーズもできないってところ。もう一つはカウンターの固着ですね。このカメラは当時としては先進的な巻き上げ機構(自動巻止め)を搭載しています。しかしカウンターが不動になると正常に巻き上げが出来なくなるばかりか、赤窓でのフィルム送りも出来ないため実質的に使えません。ですからカウンターを直さない限り写真を撮る事はできないのです。
分解と修理
いつもは外観がボロボロの限りなく価値の低いカメラばかりをレストアしていますが、このカメラはジャンクで安売りされていたとはいえ、キレイな外観とオリジナル度が高いところに、拙者的は価値を見出してしまったのですw
しかし修理に出せば数万円の修理費用がかかるでしょう。どうしようか悩んだ末に、修理に踏み切る事にしました。
まず何処から修理しようかと検討しましたが、困難そうなカウンター周りから取り掛かる事にします。
困難なカウンター周りを修理する
二眼レフの修理をする上でカウンターや巻き上げ機構の修理をするには、貼り革を剥がさなければなりません。実はこれが鬼門なのです。本革を使ってある場合や、謎の樹脂を直接貼り付けてあるもの、布や紙に樹脂コーティングしたものを貼り付けてある場合など様々なんです。
このカメラの貼り革は本革製のようですから時代からすると接着は膠でしょうかね。膠ならば水分と熱で剥がせるかも知れませんが、本革は水やアルコールを使うと傷めてしまう可能性がありますね。なので溶剤等は使わずに慎重にナイフで剥がしていく事にしました。そして無事キレイに剥がす事に成功しました。
シンプルですね。これだけのパーツで巻き上げる度に巻き上げ角を少しずつ制限してゆきコマ間が一定になるような仕組みを実現しています。
カウンター部を全て分解し、清掃、グリスアップしたらカウンターは正常に動くようになり自動巻止め機構もバッチリになりました。あとはシャッター周りを修理すればOKです
レンズシャッターのオーバーホール
今までバラしてきた二眼レフでは全てレンズ周りも貼り革を剥がさなければ修理できませんでしたが、このカメラは一切貼り革を剥がす事なくレンズ周りを分解することができました。整備製が素晴らしく良いですね。
ところがレンズシャッターを取り外すのは少し大変でした。
シャッター羽根の固着は酷くて分解して羽根を洗浄する必要があると判断しレンズシャッターを殻割りします。羽根は固着していましたから、取り外してベンジンで洗浄しました。
そして元どおり組み立てればOKです。
作動確認も良好ですね。(1秒は若干長いですがw)
光学パーツのクリーニング
レンズは全てノンコートでしたから、比較的安心してクリーニングできます。ファインダー周りでは、ミラーはキレイでしたからエアブローのみで済ませました。
殆どの2眼レフではピントグラスはバネピンで留めてあり、取り外しと取り付けには気を使わねばなりませんが、このカメラの場合は、ファインダーフードを外すだけでピントグラスを取り外せますから、とても簡単にメンテが可能です。取り外したピントグラスは落として割らないように気をつけながら拭きあげて、水準器は少しズレていましたから角度を調整しておきました。
これで、全ての修理が完了です。
最終チェックとコンディション
カウンターはきちんと一コマずつ進み、一コマごとに巻き上げ角が少なくなっていくところも正常になりました。またカウンターリセットボタンを押すと程よい勢いでカウンターが1に戻ります。シャッターチャージもスムーズですしレリーズも気持ち良いです。その他、絞りの変更やシャッター速度の変更ピントの調整なども程よいトルク感でスムーズです。これで気持ちよく撮影できると思います。
レンズは微小なキズのみでバルサム切れも無く、貼り革はすべてオリジナルで純正のキャップ付き。これは製造からの年数(約90年)を鑑みれば極上美品と言って良いでしょう。素晴らしい!
追記:試写をしてきました
あとがき
これで写真は撮れますから一度試写をして時間が取れたら再度完全にオーバーホールをしてみたいと思います。
最後まで読んでいただき感謝です。
ひょんなことから手に入れた不動のローライフレックスが復活して動くようになりました。ついに2眼レフの王様ローライフレックスで撮影ができるのです。ワクワクしますね。
一説によると、ゲルダタローが崩れ落ちる兵士を撮影したとされるカメラでもありますからねw。楽しみだなー。
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