ジャンカメハンターのぐりやんです。
今夜は、人気のハーフカメラの中でも唯一無二、ハーフの一眼レフでありまする「オリンパス ペンFシリーズ」について語ってみたいと思います。
PEN Fシリーズの特徴と違い
天才米谷美久氏が設計した唯一無二のハーフサイズ一眼レフ!それがオリンパスペンFです。
遡ること1959年、米谷氏が設計した「初代オリンパスペン」が発売になり、大ヒットしました。
そして1963年に、世界初、世界唯一のハーフサイズ・一眼レフとして「ペンF」と言う名カメラが発売されたのです。PEN-Fはバルナックライカと同程度の小型ボディでレンズ交換ができるハーフサイズの一眼レフです。外観は一眼レフなのにとんがり屋根が無いのが最大の特徴でしょう。
PEN Fシリーズには3種類のカメラが存在します。初代PEN F、そして露出計を内蔵したPEN FT、PEN FTから露出計を取り除いたPEN FVがあります。
では、詳しく見ていく事にしましょう。
PEN-Fシリーズは一眼レフなのに三角屋根が無いのはなぜ?
普通の一眼レフの仕組みはネット上にいくらでもあるので検索していただくとして、PEN Fシリーズのファインダー光路はどんな風になっているのか?というと
まあ下手なイラストですが、分りますかね?こんな感じになってます。レンスを通ってきた光はクイックリターンミラーで左に反射され次に第1プリズムで上に反射そして次にはミラーで右に反射されて普通は接眼レンズとして使われる拡大鏡を通って第2プリズムでファインダー接眼枠に導かれるのです。これでダハプリズムが不要になると言うことなんですね。凄いアイデアです。普通の一眼レフに三角屋根があるのはレンズから入ってくる像は上下左右が反転しておりまして左右を反転させるためにペンタダハプリズムと言う部品を使っていて、その形が前からみると三角屋根形状なのでカバーも三角屋根になっています。
閑話休題
では、本題のF、FT、FVの違いについて探っていきましょう。
オリンパスペンFシリーズ
オリンパスペンFシリーズのカメラは一眼レフとしてはとてもコンパクトで持ち運びやすく、最近のフィルム高騰もあり、かなり人気が出てきているカメラです。
オリンパスペンFシリーズには初代のPEN F、PEN FT、PEN FVの3種類ありますが、それぞれの特徴がわかりにくいと思うんですよね。ですから違いについて掘り下げてみたいと思います。
機 種 | 特 徴 | 時 期 |
PEN F | PEN Fシリーズ初のカメラ 実は内部構造の変更が頻繁に行われていたらしい | 1963.5 |
PEN FT | 露出計搭載(専用レンズ必要)セルフタイマー搭載 フルモデルチェンジに近い | 1966.10 |
PEN FV | PEN FTから露出計を取り除いた、マイナーチェンジ機 | 1967.2 |
初代「PEN-F」と「PEN-Fマウント」のレンズ
PEN Fは1眼レフらしからぬデザインのコンパクトな一眼レフで、デザインが独特でまるでレンジファインダーカメラのような形をしています。しかし、ファインダーがついていないように見えますから、それまでのカメラからしたら不思議なデザインなのですね。これは上で述べた通りのファインダー構造と、これまた独創的な2ストバイクのロータリーリードバルブの様な動きをするコンパクトなシャッターを開発して実現したものなのです。(詳細は探せばいくらでも出てきます)
初代PEN Fの特徴は
- ピントスクリーンが全面マット
- 露出計は内蔵していないが専用の外付け露出計が別売りされていた
- 巻き上げがダブルストローク(一コマ分を2回で巻き上げる)
- セルフタイマーはないが花文字のFがカッコいい(主観ですw)
- PEN F用のレンズ、PEN FT用のレンズ共に使える(後述)
マニアックな特徴(どうでも良い特徴とも言うw)
- 上面のPEN-Fの文字は白抜き文字で大きい
- フィルムカウンターのSに色が付いていない(40と72は黄色)
- 巻き上げレバーは鉄製で短いため、巻き上げの感触がカチッとしている
- 巻き上げレバーが鉄製であるため錆びているものが多い
- 前面にFの大きな花文字がありとても個性的でカッコいい
- シャッター速度ダイアルが無限にグルグル回る(500↔︎B)
- シャッター速度ダイアルに外付け露出計用の連動溝がある
- シャッター速度ダイアル基部に外付け露出計用の台座がある
- 底面に「オリンパスペン F 用 カメラホルダー」の位置決め穴がある
- 巻き戻しボタンが金属製で
無駄に高級感がある - 巻き戻しクランクのつまみは普通に円筒形
- 巻き上げスプールは逆巻き
- シンクロターミナルの絶縁体が赤い
- ピントスクリーンは無く第1プリスムのミラーボックス側がスリガラスになっている
- ピントスクリーンは無いが集光フレネルレンズがある
- プリズム腐食の持病がある
- シャッターブレーキに持病がある
カメラホルダーは三脚穴をレンズ同軸に移動しかつ縦位置の三脚穴を追加するためのオプションパーツ。ハーフカメラはフレームが縦構図となるためと三脚穴をレンズ同軸に配置できなかった為こう言うオプションが追加されたのではないかと推察します
「PEN-FT」と「PEN-FT」用レンズ
PEN F登場から3年後に登場した改良型がPEN FTです。大きな改良点は3つです。
- 露出計が内蔵された(注:露出計を使うにはFT用レンズが必要でPEN F用レンズを使用した場合、露出計は使えない。撮影は可能である)
- セルフタイマーが内蔵された
- 巻き上げがシングルストローク化(1回巻き上げ)された
ですが、実はフルモデルチェンジと言っていいぐらい色々な部分が変更されています。
マニアックな目線からPEN Fとの違いを考察
- シリーズ唯一のブラックボディーが超カッコいい!が、希少でお値段がかなりお高い
- ボディ上部に露出計用の採光窓がある
- 巻き上げレバーの長さ、支点、ストロークが変わっている
- 巻き上げレバーの素材がアルミ合金に変更されて華奢で傷つきやすい気がする
- 巻き上げレバーの素材と長さの変更に伴い、巻き上げレバーの操作感が若干グニャッとする
- フィルムカウンターの数字が太くなり見やすくなった
- 巻き戻しクランクのつまみの形状が俵形になった(若干格納しにくい)
- 巻き戻しクランクロックバネの形状が変更されている(俵形対応?見た目のため?)
- フィルムカウンターのSに色(黄色)が付けられた
- 上面のPEN-Fの文字は塗りつぶしで小さくなった
- シャッター速度ダイアルはグルグル回らない(500からBへは回せない)
- シャッター速度ダイアルに外付け露出計用の連動溝が無い
- シャッター速度ダイアル基部に外付け露出計用の台座がない
- 前面のFの文字は花文字ではなくあっさりしたゴシック体になった
- 露出計の追加に伴いシャッター速度ダイアルに感度設定が内蔵されている
- 露出計を搭載するためにファインダー内のミラーがハーフミラーになっている
- ファインダー光路にハーフミラーを使っているためファインダーが若干暗くなった
- 初代PEN F用の露出計を取り付けることはできない
- 露出計を使うためにはPEN FT用レンズが必須
- 底蓋に電池室の蓋がある(当たり前w)
- 電池を使用するため電池液漏れによる故障の可能性がある(これも当たり前w)
- 電池室設置に伴い三脚穴の位置が移動しており、位置決め穴は廃止
- 巻き戻しボタンがプラ製になった
- 巻き上げスプールが順巻きになった
- ハーフミラーの蒸着が弱くカビや腐食などで傷んでいるものが多い
- ピントスクリーンが採用され、マイクロプリズムが搭載されている
- ピントスクリーンが集光フレネルレンズを兼ねている
- ピントスクリーンの採用に伴い第1プリスムのミラーボックス側はスリガラスではない
- 裏蓋にフィルム押さえローラーが追加されている
- 組み立てネジが+ネジになっている
- クイックリターンミラーの形状が変わっている(軽量化?)
- マウントのネジはマイナスのままだが数が一本増えている
- シンクロターミナルにX,Mの切り替えが付いた(絶縁体は黒い)
- 初代PEN Fと比較すると内部機構はかなりの部分で変更され、内部パーツの互換性はほぼ無い
PEN FT用レンズについて
PEN FTの最大の特徴は上でも述べたとおり露出計を内蔵した事なんですが、PEN Fマウントにはレンズ側で設定した絞り値をボディに伝える機構が搭載されていないのです。これをどうやって解決したのか?実はPEN FT用レンズの絞り環に秘密があるのです。PEN FT用のレンズには絞り環にF値とその対角側に0から7(レンズによって違う)までの数字が刻んであるのです。これらは絞り環を引っ張りながら回す事によって切り替えられるようになっているのです。(切り替える事によってクリック位置も変わります)FTの露出計は0-7までの数字を指し示すようになっておりまして、シャッター速度とは連動しますが絞り値とは連動しません。ですから露出計の示す数字を絞り環にセットするもしくは絞り環にセットした数字を覚えておきシャッター速度を変更して露出計の数値を合わせる事によって適正露出が得られるという訳です。つまり、あまり使いやすくはない訳です。
これをオリンパスでは「TTLナンバー方式露出制御システム」と呼んでいたようです。
まとめると
PEN-FTとFEN-FT用レンズ(TTLナンバーがある)の組み合わせによって内蔵露出計で露出の決定ができる。PEN-FTにPEN用(TTLナンバーが無い)のレンズをつけた場合、露出の内蔵露出計を使った露出の決定はできないが普通に使う事ができる。
PEN FV
PEN Fシリーズの最終型でありますPEN FVでは何が変わったのか?それはPEN FTから露出計が取り除かれただけと言って良いでしょう。ですから初代とFTの融合形というか、先祖返りと言うか、いいとこ取りというか、まあPEN-Fシリーズの完成形と言えるかもしれません。それでも実は細かな違いがあります。PEN FVは所有していませんから間違いがあるかもしれませんが、突き止めた限りの違いを挙げておきます。
マニアックな目線からPEN-FTとの相違点を考察
- FTでのハーフミラーが不要になり全反射ミラーとなったため、ファインダーが若干明るくなった
- 初代PEN F用の外付け露出計を取り付けることが可能となった
- 露出計採光用の窓は不要になったため廃止された(当然かw)
- 電池も不要な為、底面に電池ブタがない(これも当然かw)
- 電池がないので液漏れによる故障は起こり得ない(当然だろ、クドい>拙者www)
- 三脚穴の位置はFTと同じ(初代とは違う)
- シンクロターミナルX,Mの切り替えは廃止され絶縁体の色は黒になった
- F用、FT用のレンズ共に問題なく使える(これも当然ですなw)
シリーズ共通の問題点
忘れちゃならない問題点。まあ古いですから致し方なしw
- レンズの流通量が少なく、全般的に値段が高めである
- アクセサリーシューがないので、そのままではフラッシュを付けることができない
- オプションのアクセサリーシューを取り付けるとアイピース破損のリスクが高い
- アイピースが破損している事が多い(製作販売している方がいるので入手は可能)
- オプションの入手が難しい
- クイックリターンミラーの接着が劣化し剥がれることが多い
- 内部にモルトがたくさん使われているため、交換されていない場合ひどく劣化している
- 故障したら部品の入手は絶望的。初代PEN-F系とFT、FV系の共通部品は無いと思った方が良い
- FTとFVには共通部品が多い
- 初代PEN-Fでも前期と後期ではかなり部品が異なるらしい
シリーズ中、最もオススメなのは? それは難しい問題だ!
- Fは見た目は良いがプリズム腐食、シャッターブレーキ、ガバナのレバーが弱いと言う話もある。
- FTは唯一ブラックボディがある。(玉数が少なく人気があるため高価)ハーフミラーが腐食しやすい。しかしハーフミラーを製作されている方がいらっしゃるので今のところ入手交換は可能である。露出計を搭載してはいるが使いやすくはないし露出計を使うにはFT用レンズが必要。露出計CdSの劣化も気になるし、CdSは専用品なので故障すれば交換は絶望的。しかし露出計を諦めれば、ハーフミラーを全反射ミラーに交換すると言う改造(FV化)も可能である。玉数が多くハーフミラー以外のトラブルは少ないようだ。
- FVは露出計は無いがファインダーは明るいし他の機種よりほんの少し新しい。でも玉数が少なく値段が高い事が多い。
さてあなたはどれを選びますか?拙者は初代が一番好きかなぁ。何処かって?外観のカッコよさとと巻き上げレバーのカッチリ感。でも勧めるとしたらFVかな?しかしFVはお高いので間をとってFTかなあw
て訳で、オススメは?と聞かれても難しいのであ〜るwww
拙者所有のPEN-Fシリーズをご紹介
拙者は「カッコ良すぎるFTブラック40mmF1.4付き」を見たら気絶してw、かなり昔に入手しています。その後、初代PEN-Fを2台を入手ました。
最初に入手したPEN-FTは、もちろんジャンク。露出計が動かずハーフミラーがカビだらけでした。自分でO/Hしてハーフミラー洗浄、劣化モルト交換、露出計(CdS)を修理しました。露出計は動いていますが弱っていて使い物になりません。ハーフミラーは交換していないのでファインダーの見え具合はイマイチです。
PEN-F(1号機)は「1,500円」と超激安のジャンク品でした。ミラーアップでシャッタースタック、開けてみたらファインダーは黒点だらけ、原因はプリズム蒸着のひどい腐食。クイックリターンミラーのカビも酷かった。裏蓋ロックのスプリングは部品取りされたらしく付いていなかった。一応オーバーホールの練習を兼ねて分解整備、バネは適当なものを取り付けて内部のモルトも全て張り替えて正常になりました。ですから写真は撮れますが、いかんせんファインダーの見え方が酷すぎるので、二号機を入手する事にしたのでした。
PEN-F(2号機)は38mmレンズ付きでこれまた格安(とはいえ、1号機の3倍強の値段)でしたが、何の問題もなく動いています。ファインダーもスッキリクリアで所有する3台中、一番見やすくて明るいです。おそらく整備品だろうと思います。内部は見ていませんが、いずれ一度開けてみようとは思っています。
所有レンズは、38mmF1.8 40mmF1.4 100mmF3.5の3本のみです。100mmF3.5はジャンクで投げ売りされていたものを入手しました。
終わりに
そんなこんなでPEN Fシリーズはオススメなのか?どうなのか?
はい!もちろん!オススメです!拙者の大好きなカメラでもあります。
人気のカメラですから可動品も多く流通していますが、古いカメラですから故障は覚悟しておいた方が良いですし修理できない事もあると思います。修理出来たとしても修理代は嵩むでしょうから保証付きのものを購入されるのが良いと思います。相場はレンズ付きの美品で3万から5万程度でしょうか?
チャレンジャーはネットショップやネットフリマへGOw
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