こんばんは。今夜もラジオ深夜便を聴いている、ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はペンタックスESⅡのブラックボディです。
もちろん正常に動かないジャンクカメラですw
ASAHI PENTAX ESⅡ
ESⅡは世界初の絞り優先AE搭載機である、PENTAX ESの改良型と言えるカメラです。
発売は1973年(51年前)です。
特徴は何と言っても絞り優先AEとそれを実現するために搭載されているハイブリッドシャッターです。
ハイブリッドシャッター?それは機械式と電子式のハイブリッドって事です。
AUTOMATICモードにすると1/1000から8秒まで無段階に電子シャッターで動作し、マニュアルモードにすると全て機械式でシャッターが作動します。と言いましてもマニュアルシャッター時に選択できるシャッター速度は1/1000から1/60までで、スローシャッターを選択する事はできないんですけどね。
それでも電池がなくなったら全く使えなくなるカメラに比べると雲泥の差です。
先代のESでは省略されていたセルフタイマーが搭載され、それに伴ってアイピースシャッターも内蔵されています。オートモードでセルフタイマー撮影する場合アイピースから入った光で露出が狂いますからアイピースシャッターは必須の装備だと言えます。
ESでは4LR44か4SR44が必要ですが、ESⅡではLR44/SR44を4つ用意すればよいのでこの点も良いですね。電池の値段が全然違いますからね。
注意しなければならないのは「SMC TAKUMARシリーズのレンズを使わないとTTL開放測光でのAUTOは使えませんよ」って事ですね。旧世代のSuperMultiCorted TAKUMARなどではTTL開放測光でのAUTO撮影は出来ません。しかしビックリしたのはSMC TAKUMAR以外の開放測光未対応レンズでも絞り込みAEができるって事です。これほど互換性を重視して設計されたとは、旧来ユーザーを大切にするペンタックスならではですね。
2023年現在レンズマウントを変更していないのは国内ではペンタックスだけですからね。
状態
さて状態は、ミラーアップ状態でミラーがスタックしています。しかし巻き上げは出来ますしシャッターも動いているようです。
つまり故障箇所はミラーだけという事になります。
電気じかけなカメラでは電池の液漏れが問題になる事が多いのですが、幸い電池のひどい液漏れは無く電池ボックスの腐食は微少で問題にならないレベルでした。
早速底蓋を外しミラー作動カムなどをチェックする
このミラーアップスタックという症状は、ネットを探せば対処法が結構出てきます。
この底蓋内の機械的な部分の構造はSPなどと同じです。
ただしESⅡは底蓋内に電子回路の基盤がありますからまずは基板を取り外す必要があります。
するとこの頃のペンタックスのカメラ(SP等)と同じような設計になっているのがわかります。
後幕が閉まる時にミラーアップカムを蹴飛ばしてミラーを戻すようになっていますが、ここが渋くてミラーが下がらないようです。
この2箇所にグリスアップと注油をしたらミラーが下がるようになりました。
動作確認
ミラーアップが治った事で確認できなかったファインダーの確認ができるようになりました。
覗いてみてわかったのですが、微少なプリズムの腐食があります。残念ではありますが、微少ですので撮影に支障はありません。。
さて気を取り直してシャッターの作動を確認します。
このカメラのシャッターはマニュアルでは電池なしで動作します。マニュアルシャッターは問題なく動いているようです。
電池を入れて、AUTOMATICをチェックします。シャッターが切れはしますが、正常にシャッター速度が変化しません。絞り環を回しても、明るいところへ向けても暗いところへ向けてもシャッタースピードが変化しないのです。メーターも動きません。これは致命的な故障か?
バッテリーチェックはちゃんと出来ます。
さてどこが悪いのでしょう?
注意深く観察します。(結局修理で一番大切なのは観察して故障の原因を見極める事なのです)
問題箇所発見?
チェックしてみますと、どうやらレンズの絞り環を動かしても、その動きがボディに伝達されていないのでは?って感じがしてきました。
絞り値はレンズ側のこのレバーとボディ側のこのカムによって伝達されます。レンズ側は全く問題がないようですが、ボディ側のカム(赤矢印)を指で動かしてみるとどうも途中で引っかかっているような気がします。
ちょっと力を加えてやると正常な位置まで戻りました。どうやらここが悪いようです。
ここを整備するにはレンズボードを外さなくてはなりません。重修理確定ですわ(^_^;)
患部を目指す
軍艦部に付いているレバーやダイヤル類を外していきます。PENTAXは逆ネジが使われている部分がありますので注意が必要です。次に貼り革を剥がしてレンズボードを取り外します。ほとんどの場合はセルフタイマーをチャージしておいたほうが組み立て時に楽になりますので、チャージした状態のまま分解します。
マウントの裏側に何か問題があるはずですので、レンズボードを取り外すところまで分解します。
マウント内側には二つの回転カムがあり、絞り環の回転角を伝達するカムとスクリューマウントのネジ込みの位置誤差を吸収するカムの2階建構造になっています。
レンズを付けて確認すると絞り伝達カムが途中までしか追従していない事がわかります。
ここに問題がある様ですので分解してみると、
このネジが緩んで引っ掛かっている事がわかりましたので、締め込んで組み立てたところ、問題は解消しました。
ペンタプリズム周りのクリーニング
軍艦部を開けたついでに腐食のあるペンタプリズムもクリーニングしておく事にします。
取り外すとグルリと一周モルトが貼られており、モルトは加水分解で劣化しています。
そして劣化したモルトによってプリズムの銀蒸着が腐食しているのです。
これ以上腐食が進行しないようにクリーニングしておきます。黒い部分は銀蒸着の保護のための塗装ですから、溶剤を使うとさらに蒸着を痛める事がありますからクリーニングは慎重に行います。ついでに少しクモりがありましたのでプリズムの透過面もクリーニングしておきました。
このカメラの優れた整備性
余談ですが、電子化されたカメラの軍艦部カバーを開けると通常の場合は電子回路を搭載したフレキシブル基板が出てきて配線があちこちに走っていて電子回路アレルギーの人はそのまま閉じたくなるでしょうし、ハンダゴテを使った作業は途轍もなくめんどくさいものです。
しかしこのカメラは軍艦部を開けても電子回路は存在しません。
どこにあるのかと言えば、カメラの底の部分に一枚のガラエポ(ガラスエポキシ)基板として搭載されています。ですから電子化されたカメラとしては、他になくとても整備性が良いと言えるでしょう。
設計された方々に敬礼!
最終チェック 果たしてAEは正常に動作する様になったのか?
先日修理したSMC TAKUMAR 50/1.4を取り付けて、作動チェックを実施します。
まずはAUTOMATICにしてレリーズボタンを半押ししてみます。するとシャッター速度指針が動きました。シャッター速度値は正確な適正露出を示しているようです。絞り環を回すとシャッター速度指針が連続的に変化します。レリーズしてみると、シャッター速度も正常に変化しているようです。
次に明るいところへ向けてパシャリ、暗いところへ向けるとパッシャン、と自動的にシャッター速度が変化しました。どうやら直ったようですね。良かった良かったw
次いで、旧タイプのSuper-Takumarを着けてチェックです。旧タイプのレンズをこのカメラに付けた場合はレンズ側の絞り設定値をボディに伝える事ができませんが、絞り込みレバーによって絞り込み(実絞り)で、絞り優先AEが使えるのです。そしてこちらも問題ない事がわかりました。
完全復活と言ってよいでしょう!
コンディション認定
外観は塗装に若干の痛みがありますが、アタリはなく美品クラスですね。全ての動作は正常で電池室の腐食もありません。問題点はプリズムの微少な腐食だけですね。
てな訳で「問題点はプリズムの微少な腐食はあるが撮影には問題のない。難あり品」と言えるでしょう。SPのジャンクは沢山あるのでプリズム移植も考えましたが、腐食は使用に耐えますのでこのまま使っていこうと思います。
あとがき
このカメラ少し背が高いのですがカッコいいです。見た目だけで欲しくなる人も居るのでは無いかな?
マニュアルでは露出計は使えませんが、AUTOMATICにすれば露出補正もできますし、TTL開放測光ですから後年のカメラと遜色なく非常に使いやすいカメラだと感じました。
いずれ試写をしてみたいと思います。
最後まで読んでいただき感謝です。
また往年の名機コレクションに一台のカメラが加わりました。
「オールドカメラは機械式一択でしょう」という向きも多いのですが拙者は電子式シャッターを搭載したカメラが好きなんですよね。50年以上前の電子機器が正常に動くなんてスゲーと思いませんか?直すのは大変だし、いつ壊れるか分からないんですけどねーw
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