
ジャンカメハンターのぐりやんです。
最近コダックの新品フィルムカメラを見かけるようになりました。しかし昔からのコダックファンからするとほんとにコダックのカメラなの?って感じを受けると思います。
って訳で、最近見かけるようになったコダックのフィルムカメラについて探ってみたいと思います。
最近よく見かけるオシャレなコダックのフィルムカメラ
ここ数年、ネットショップや動画サイトなどでオシャレでカラフルなコダックのフィルムカメラをよく見かけます。拙者は持っていないのでどんな物かはわかりませんが、見る限りなかなか魅力的なカメラだと感じています。
しかし、昔からのコダックファンからすると、ほんとにコダックのカメラなの?って感じますのでちょっと調べてみる事にしました。
KODAK EKTAR H35とH35Nについて調べてみた
Kodakとは?って事ですが主に「イーストマンコダック社」のことをコダックと呼ぶことが多く、アメリカコダックと言われることもあります。そしてドイツコダックであるKODAK AGも忘れてはいけません。こちらは元々ドイツのナーゲルという会社でしたがイーストマンコダック社に買収されてドイツコダックになりました。作っていたのはカメラのみで、名機Kodak Retinaシリーズを製造していました。
EKTARとは?エクターといえば往年のコダックカメラに搭載されていたレンズの名前です。エクターはコダックの自社製カメラに搭載されたのはもちろん、大型カメラ用や初期のハッセルブラッドやドイツコダックにも供給されていました。ハッセル用のエクター交換レンズやエクター付きのレチナは数が少ないようで、現在でも高値で取引されています。
イーストマンコダック社はかつて世界最大の写真関連メーカーでフィルムをはじめ印画紙やカメラ、レンズなどを製造していましたが、メインはフィルム事業だったのだと思います。多くのフィルムを規格化したのがイーストマンコダックで、現在残っている135や120という規格もコダックのものです。世界初のデジタルカメラを開発したのもコダックでした。コダックが写真、カメラ界に残した功績は途轍もなく大きなものなのです。しかしコダックはデジタルカメラの波に乗り遅れ、2012年に経営破綻したのです。
その後、コダックはカメラおよび写真用フィルム事業から撤退し商業印刷に専念、コダックのフィルム部門はイギリスのファンドに買い取られコダックアラリスという会社になりました。ですから現在のコダックフィルムはイーストマンコダック社の製品ではなく別の会社の製品って事になります。つまり、現在のイーストマンコダック社はカメラもフィルムも作っていないのです。(2024年現在、映画用フィルムは販売を継続しています)
そこで疑問が湧いてくるのです。コダックはカメラの製造をやめてしまったはずのに、なぜ現在もコダックのカメラが存在するのでしょうか?
現在のコダックカメラとブランドライセンス
現在、コダックブランドを冠したカメラを発売している会社は4社あります。またコダックというブランド名を使用してカメラ以外の製品を販売いる会社に至っては10社以上あるのではないでしょうか?
なぜなんでしょうか?
それはコダックという会社が、コダックというブランドを各社にライセンスしているからなのです。そんなん詐欺じゃんという声が聞こえてきそうですが、実はブランドライセンスは今始まったことではく、珍しくも無い事なのです。
過去のカメラ界から例を挙げるとすれば、CONTAXが良い例でしょう。コンタックスは元々ドイツのカメラでしたが、ヤシカ/京セラが製造販売していたわけですから。何ならコシナが製造しているフォクトレンダーやZEISSもドイツのブランドですし、コシナ以外のZEISSレンズもブランドライセンスだと思われます。ZEISSのレンズが付いたソニーのカメラやスマホ、ライカのレンズがついたスマホなんかもおそらく同じだと思います。現在のYASHICAも、ブランドだけを所有している会社があり、色んな会社へライセンシングされています。
新しい?現代のコダックカメラは数社から発売されている
現在コダックブランドは以下の4社に対してブランドライセンスを提供しているようです。
- JK Imaging Ltd. (デジタルカメラ)
- Prinics Co., Ltd(インスタントプリントカメラ)
- RETO Production Ltd. (フィルムカメラ)
- Meta Imaging Solutions Limited.(フィルムカメラ)
つまりコダックのカメラは4つの会社から、フィルムカメラに至っては2社から販売されているのです。
KODAK EKTAR H35Nはどの会社の製品なのか?
4社のコダックの中でも拙者的に気になるのは、香港のRETO Production Ltd. という会社のプロダクトです。この「レト」という会社はRETO3Dというレンズが三つの3Dカメラを引っ提げてキックスターターに登場したメーカーです。
当時、RETO3Dのクラウドファンディングでは20万香港ドルを目標に資金調達を開始し、最終的には5倍以上の105万香港ドルもの資金調達に成功して製品化されたのです。そして現在、レトのカメラはRETOとKodak二つのブランドで展開されているって事になります。
KODAK EKTAR H35とH35Nの違い
KODAK EKTAR H35とH35Nの違いを調べるため「RETO」のサイトを見ると「RETO Ultra Wide & Slim」という見覚えのあるカメラが目につきました。これは一時期流行った「VIVITAR ULTRA WIDE & SLIM」と同じ物でしょう。このカメラは色々なところから発売されていて拙者も1つ持ってます。
どうやら、Ultra Wide & Slim系カメラをハーフカメラ化したのがKODAK EKTAR H35系カメラの様なのです。


KODAK EKTAR H35
なぜ、Ultra Wide & Slimを基にしたと言えるのか?なぜならレンズのスペックが22mmの2群2枚構成と同じであることや裏蓋を開けた内部や裏蓋の形状巻き上げノブや巻き戻しノブなどもそっくりであること。ファインダーもフルサイズのものにハーフ用のマスクを被せたように見えます。いや間違い無いでしょう。
つまりレンズやファインダーの光学パーツやフレームの骨格部分などはULTRA WIDE & SLIMの部品を流用し、ハーフ化とフラッシュ内臓の再設計がなされていると考えられるのです。
KODAK EKTAR H35N
そして改良型のH35Nでは主に正常進化と言える変更点と目新しさを狙った変更点があるようです。
まず正常進化と言える点ですが、2群2枚のレンズのうち前玉がコーティング(おそらくマルチコート)されたガラス製レンズに変更されていること。これがH35Nの目玉でしょう。トイカメラ系ではレンズがプラスチック製のものがほとんどですから、コーティングなどは無く露出している前玉を拭いたりすると簡単に傷かついてしまうものです。H35Nではガラスレンズ+コーティングですから、傷がつきにくいというメリットが一番大きいと感じました。もちろんコーティングにより抜けが良くなっていると思います。その他はケーブルレリーズが使えるようになった点やバルブシャッターが使えるようになった点、三脚が使えるようになった点、ファインダー対物レンズが縦になった点(新設計ではなく従来のレンズを縦に取り付けたように見える。接眼レンズは横のまま)などが改良点でしょう。目新しさという点では、スターフィルター(と説明されていますがいわゆるクロスフィルター)を内蔵した点です。これは面白い試みですね。
新しいRETO社製のコダック、良いんじゃないですか?拙者はとても興味を持っていますよw
プラスチックレンズというだけで低品質とは言えません。現在のプラスチックレンズは技術の発達により光学ガラスに匹敵する性能があります。現代のメガネのレンズは、ほとんどがプラスチック製ですし、高級な一眼レフ用のレンズにもプラスチック製のレンズは使われています。特にミノルタが開発した複合型非球面レンズは高価格であった非球面レンズを低価格帯のレンズに採用することを可能にした画期的な発明だったのです。(αAF ZOOMズーム 35-70mm F4 / 24-50mm F4に採用)
現在では完全にプラスチック製のプラスッチックモールド非球面レンズが開発され、カメラやスマホ、そしてメガネのレンズになどに使われているのです。
昔のコダックとは? 拙者が所有する往年のコダックたち
拙者が持っているコダックのカメラは何があるかな〜と思いましてピックアップしてみました。
持っているのはアメリカコダック製が2台とドイツコダック製が2台でした。
参考までに、昔のコダックについての簡単な紹介と拙者所有のカメラを紹介しておきます。
Eastman Kodak Co.,製カメラ(アメリカコダック)
イーストマンコダックは1881年に写真乾板会社として創業し1885年には紙製ロールフィルムを開発、1888年に初めてロールフィルムカメラ採用したKODAK CAMERAを発売したそうです。このカメラは100枚の撮影が可能だったそうですがフィルムを交換することはできす撮影後はカメラごとコダックに送る必要があったそうです。そして$25ととても高価なものでした。創業者イーストマンの生涯の目標は、写真撮影を簡素化し普及させることだったそうで、それを達成したと言えるカメラが1900年に発売された「ブローニーカメラ」で、価格は$1でした。
その後コダックは非常に多種のフィルムと多種多様なカメラなどを製造販売していくことになります。
KODAK No.2 Folding CARTRIDGE PREMO
「No.2 Folding CARTRIDGE PREMO」は1916年にアメリカのイーストマンコダックから発売された非常に古いカメラで拙者所有のカメラの中で最古のカメラです。使用フィルムは現在でも普通に入手できる120フィルムってところがポイントです。フォーマットは6x9cmと大きいのですが、レンズを格納するとGパンのポケットに入るという非常に優れた携帯性があります。
拙者が持っているのはRRレンズ付きの高級バージョンです。
Kodak Signet 35
「Kodak Signet 35」は1951年にアメリカのイーストマンコダックから発売されたシグネットシリーズ最初のカメラです。ボディはアルミ合金の一体成形で、その見た目からミッキーマウスカメラと呼ばれることもあります。レンズはコダックの名レンズ「EKTAR」を冠するテッサータイプの44mmF3.5でレンジファインダーを搭載していますので正確なピント合わせが可能です。このカメラを分解して驚いたのはピントリングにボールベアリングが使われていたことです。こんなカメラは他に見たことがありません。そして、手袋をしたままで全ての操作ができるような設計となっていることから、元々軍用に設計されたものを民生用にしたものではないかと推測する人もいるようです。
Kodak AG製カメラ(ドイツコダック)
元々はドイツのナーゲルという会社をイーストマンコダック社が買収してドイツコダック(KodakAG)になりました。作っていたのはカメラのみで、製造していたのは名機Kodak Retinaシリーズです。レチナは大きく3種類に分類することができ、I(型)はビューファインダーモデル、II(型)はレンジファインダーモデル、III(型)はレンジファインダー+露出計内蔵モデルとなります。
Kodak Retina Ia
「Kodak Retina Ia」は1951年にドイツのコダックAGから発売された、レンズを格納することができるフォールディングカメラです。初期レチナシリーズの角ばった小型の筐体を採用しています。ドイツのカメラらしくシャッターはコンパーで、レンズはシュナイダークロイツナッハ製のレチナクセナー50mmF3.5が搭載されています。レチナシリーズで初めてレバー巻き上げを採用したカメラでもあります。レバー巻き上げはレチナが元祖と言われることも多いようですが、実際ははっきりしないようです。ビューファインダー搭載でピントは目測です。
Kodak Retina IIIc(TYPE021)
「Kodak Retina IIIc」(TYPE021)は1951年にドイツのコダックAGから発売された、レンズを格納することができるフォールディングカメラです。レチナシリーズ後期の丸みを帯びた大型の筐体を採用しています。レチナでは高級ラインと言えるカメラでレンズはシュナイダークロイツナッハ製クセノン50mmF2(4群6枚)を搭載しています。レンズの前玉が交換式となっており、35mmと80mmの交換レンズが用意されていました。また露出計のLV値を読み取りレンズ周りのLVリングにセットするだけで適正露出を得られるLV方式で露出を設定するようになっています。
あとがき


最後まで読んでいただき感謝です。新しいコダックも良いけど古いのはもっと良いですよw
しかし、EKTAR H35Nこれはなかなか気になりますよね。22mmというレンズに着目してハーフカメラ化したというアイデアはすばらしいと思います。欲を言わせていただけるならもう少し安くならないかなぁ。円安のアンポンタンw
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