今日もミュージックラインからTHE ALFEE 終わらない夢を聴きながらブログを更新している、ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はCANON New FD35-70 F4 のジャンクです。
CANON NEW FD 35-70mm F4
1979年に初登場したNewFDレンズは29本、その内ズームレンズは7本、その中に標準ズームと呼ばれる35-70が2本。このレンズは、その2本のうち安いほうの一本です。価格は¥45,000でした。
今となってはズーム倍率はたったの2倍ですが、当時はとても一般的な標準ズームでした。
ちなみにもう一本は35-70 F2.8-3.5でありましてこちらは¥108,000と倍以上したため中々手が届かないレンズだったことが予想されますね。
今年に入ってレストアしてきた望遠ズームレンズはすべて4群ズーム方式でしたがこのレンズは2群ズーム方式です。レンズユニットが2つに分かれていて、ズーム前群はフォーカス系と補正系、ズーム後群が変倍を担っている方式だそうですよ。キヤノンのこの時代のズームレンズは持病があるのでジャンクがたくさん転がっています。良品をお店で買う場合は必ずレンズを振ってカタカタしないか確認してくださいね。(下記参照)
状態の確認と整備の方針
実はこのレンズ既に一本持っています。もちろん激安ジャンクで入手したもので既にレストアを終えています。記録を残していないのでどんな状態だったのか忘れてしまったのですが、、覚えているのは鏡筒内でズーム前群がカタカタと遊んでいたこと。分解するとカムスロット(ズームレンズ群が嵌っているガイドレール)にハマっているスペーサー(プラスチック製)が経年(おそらく加水分解)で朽ち果てていたのです。この時代のキヤノン製ズームはこのパーツの素材に問題があったようで他のレンズでも同じ症状がみられます。所謂持病と言えますね。
前置きが長くなりましたが今回入手したレンズも同じように前から見えるレンズユニット(ズーム前群)がカタカタと遊んでいます。
そして外観はかなりボロボロレンズエレメントはカビとクモリがあります。
まずはカタカタレンズを修理しなければ始まりませんので分解してカムスロットとスペーサーの状態を確認し復元方法を考えます。それと確認できない後群のスペーサーも確認する必要がありますね。
分解
このレンズは2群ズームですがズーム第1群がカタカタと遊んでいるので、まずはそこを目指す訳ですがこのレンズのズーム機構は後部鏡筒部分に内蔵されています。前部鏡筒にはピント機構(回転ヘリコイド)しかありません。まずは鏡筒を分離します。
バラすにはまず、レンズ先端にあるカニ目リングとピント、ズームのゴムリングを外します。
そしてズームリングを70に合わせると見えるネジとカラー(実は前群ズームカムです)を外します。
すると前部鏡筒内から前群がごそっと抜けて来ます。こうすればヘリコイドをバラさずに分解できますからピントの狂いを回避できますね。
フォーカス環はロックピンを抜いて鏡筒内部に見える小さなネジ3本(4本のタイプ、6本のタイプもあるかも)を抜けばピントリングごと前部鏡筒が抜けます。
あとはズームリングを外せばカムスロットが見えます。その中に、もう一つのネジとカラー(後群カムです)が見えます。
ここから先どこまで整備するかですが、ズーム2群を抜くにはマウントもバラす必要がありますよ。
ズームリングの位置決めには偏心カムが使われているので注意が必要です。この偏心カムがズーミング時の補正量の調節を担当しているようです。
また後群を若干回転させてズーミングによって絞り羽根が微妙に動く様になっていますがここにも偏心カムが使われています。
カムの状態と修復
前回は熱収縮チューブを使ってスペーサーを作った記憶がありますので、今回も熱収縮チューブで製作します。ていうかカムに熱収縮チューブを嵌めるだけなんですけどね。
ズーム前群、ズーム後群、ズームリング偏心カム、フォーカスカムのゴムスペーサーを作成しました。
カムのベース部分である金属(真鍮)のパーツに程よいサイズの熱収縮を被せて熱を加えて両端を切り揃えれば完成です。
ズームカム
カムとカムスロットをノギスで測って見たところカムスロットの幅は4mmでカムカラーの直径は3.5mmその差は0.5mmしかありませんでした。ですからクリアランスは半分の0.25mm程度ってことになります。熱収縮チューブの厚みを測って見たところ0.2mmでしたのでちょうど良いかなぁ?
ズームリング偏心カム
ここはズレるとめんどくさいので、いっぺんに外さずに順番に外して作成した方が良いです。
いっぺんに外してしまうと、元に戻すのが大変です。
フォーカスカム
フォーカス機構はヘリコイドと前群ユニットの周囲についている3つの直進カムが司っているのですが、ここにもガタがあってプラッチックのカスがこびり付いていました。ここにもスライダーのような何らかのパーツがあった様です。これも想像で作成します。
こちらは3DプリンターでTPU(ポリウレタン)で作成しました。(前回は熱収縮チューブで作成)
クモったりカビたりしてるレンズエレメントのクリーニング
まずはズーム1群後側、つまり3枚目の後ろ側が思いっきりカビていますのでクリーニングします。
レンズの整備にはレンズサッカーがあると非常に便利でオススメです。
そしてクモリ玉。このレンズがクモるのは持病の様で2本とも同じレンズがクモっています。
構成図で言うと5枚目のレンズの前側です。しかもクモったレンズユニット(4枚目と5枚目がユニットになっている)を外してしまうとレンズの位置が狂ってしまうようで、きっちり締め付けると片ボケ、しかもピントがきっちりと合わなくなります。元どおりにするのは非常に困難でした。
3本のネジの締め具合(ていうか緩め具合?)とバネのテンションでレンズの位置を調整してあるようです。多分完全に元には戻っておらず妥協点を見つけて良しとした感じです。そこらへんがこのレンズのレストア記事が見つからない原因かもしれませんね。
できればこの3本のネジは触らないことをお勧めします。
最終チェック
なんだかんだと結局ヘリコイドやらズームリングもバラして全てクリーニングしてグリスアップしましたので操作感は非常に良いです。
画質も妥協点を見つけながらの調整でしたが、ほぼ満足のいく画質に調整できました。
コンディション認定
問題はなさそうなんですが微クモリが残っているため「難あり品」に認定ですね。
あとがき
このレンズは2本目で、前回入手したものは6万番台今回のものは19万番台です。内部構造が若干変更されていますね。所謂コストダウンと整備製向上のための改良がされた様です。またコーティングも少し違うみたいです。
コンパクトでプラ化もあまり進んでいない初期のNewFDレンズなので入手して遊んでみるのもオススメですね。NewFDは時代が進むにつれプラ化され、指標なども印刷になるなどコストダウンが進んでいきますから、NewFDを入手するなら初期がいいですよ〜。
最後まで読んでいただき感謝です。
次回は1980年発売のサードパーティ製、広角ズームレンズをレストアしていきたいと思います。
乞うご期待w
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