ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はジャンクレンズ、1971年に発売されたミノルタSR-1(第3世代)用の標準レンズとして同年に発売されたという標準レンズ AUTO ROKKOR-PF 50mm F1.8です。

ロッコールとSRマウントと謎のアルファベットについて
オートロッコールというのはミノルタの一眼レフ用のマルチコートのレンズとして販売された最初のシリーズでその登場は1958年ミノルタ初の一眼レフであったSR-2と同時でした。レンズ名の後につけられている記号”PF”はレンズの構成を表しています。

| 記号 | T | Q | P | H | S | O | N | |||
| 群数 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||
| 記号 | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L |
| 枚数 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
ですのでPFなこのレンズは5群6枚構成ということになります。
MF時代のミノルタ一眼レフ用マウントの名称はSRマウントと呼ばれますがその形状は基本的にすっと同じでAF時代のAマウント(αシリーズ用AFマウント)に変更されるまで同一でした。しかし時代を経るごとに機能が追加されたため呼び名が違い分かりにくいのです。
単にSRマウントという場合でも2種類があり、自動絞りに対応しているAUTO ROKKORと対応しないROKKOR、MCマウントとよばれ開放測光に対応したMC ROKKOR、MDマウントと呼ばれマルチモードに対応したMD ROKKORとNEW MDがあるのです。しかしこれらのマウントは基本的に形状は同じですからマウントアダプターを介してデジカメで使用する場合はSRでもMDでも同じで、別々にそろえる必要はないのです。
| レンズ表記 | 自動絞り機 SR-2 SR-n | 開放測光、Aモード機 SR-T101 XE X-7など | マルチモード機 XD,X-700など |
| ROKKOR | △手動絞り | △一部制限 | △,一部制限 |
| AUTO ROKKOR | ⚪︎ | △一部制限 | △一部制限 |
| MC ROKKOR | ⚪︎ | ⚪︎ | △一部制限 |
| MD ROKKOR | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
| MD | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
MF時代のカメラで使う場合は後方互換であるが少しややこしく、簡単に説明すると、無印ROKKORはすべてのカメラで手動絞りで使うことができ、AUTO ROKKORはすべてのカメラで自動絞りで使うことができ開放測光機でも絞り込み測光で使うことができます。MC ROKKORはすべてのカメラで自動絞りとして使うことができ、開放測光に対応したカメラであれば開放測光で使え、絞り優先AEにもも対応しますが、マルチモード機ではSやPモードに制限があります。MD ROKKORやMDならばすべてのカメラで自動絞りで使えますし、開放測光にも対応、露出モードもすべて対応します。
MINOLTA AUTO ROKKOR-PF 55mmF1.8(第2世代)
当レンズはオートロッコールPF 55mm F1.8の第2世代であり、MINOLTA SR-1初期型(第1世代)用の標準レンズであったオートロッコールPF 55mm F2の後継としてSR-1(第3世代:1961)と同時に登場したと言われている。巷ではオートロッコール55mmF1.8の前期型とか2型と言われることもある。オートロッコールPF 55mm F1.8の初期型(第1世代)はミノルタ初の一眼レフMINOLTA SR-2の標準レンズとして1958年に登場、絞りがF22まであるのが特徴であった。第2世代は見た目はほぼ変わらないようだが絞りがF16までしかない事が特徴である。

初期のオートロッコールの絞り環には黄色い文字でLV値が書いてあるのも特徴と言えるだろう。その後第3世代、第4世代と続き、1966年に MC ROKKOR-PF 55mm F1.7にバトンタッチし姿を消した。
購入時の状態

- 絞り羽根が正常に動かない(油分侵入による粘りの可能性)
- ピントリングの動きがとても固い(ヘリコイドグリス劣化の可能性)
- 汚い(特に後玉は気になるレベル)
とまあ、そんな感じ。順に掃除しながら直していきたいと思う
分解開始
いつものようにレンズ銘板から分解していきます。レンズ銘板は金属、おそらく真鍮製でした。カメラが超高級品だった時代のレンズはとても作りが良い。

前群を取り外そうとするとめちゃくちゃ緩んでいた。これは分解歴がありそうだ。前群を取り外し状態を確認すると、コバに若干傷みがあるが手直しするほどではないと判断。レンズエレメントはキレイそうで、カビも無さそうである。
古い時代のレンズは鏡筒が2重構造になっているものが多かったが、後年は小型化やコスト削減のため一体型のものが多くなった。(NikonはAiAF時代でも2重構造)これは古いのでおそらく2重構造つまり内部鏡筒・絞りユニットがマルッと取外せると思う。おそらく前玉周辺に見える真鍮のカニ目リングを外せば内側鏡筒が外れると思う。真鍮カニ目リングは固く締まっていたのでレンズオープナーで取り外した。これで内部鏡筒が抜けてきました。外部鏡筒をチェック。ヘリコイドは固いもののこれと言った異状は無いように見える。内部鏡筒の絞り作動カムを操作するとかなりの粘りがあった。

絞りを整備するにあたり、内部鏡筒と後群を分離する必要があるが、超固く締まっておりエチルアルコールでネジロックを緩めつつレンズオープナーを使いやっとのことで分離に成功!このレンズオープナーは力をかけやすいが、ミスるとダメージがデカいんで注意です。外れた後群をチェックすると内部のレンズエレメントはキレイなようだが後玉の傷みが酷そうである。
絞りユニットの分解整備
問題の絞り羽根にはやはり油がまわっていた。

内部鏡筒の絞り付近外縁には3方向にネジ穴があり1箇所だけ位置違いで二つの穴がある。中にはイモネジが見えており位置違いのイモネジでアルミリングが止めてあった。イモネジはネジロックされている事が多いのでエタノールを注入して緩めた。イモネジは破損しやすいので無理は禁物、溶剤で緩めながら安全に取り外す。アルミのリングはネジになっていた。奥の真鍮リングに絞り羽根が取り付けられているはずなので3本のネジ(強力にネジロックされていた)を緩める。おそらく、このリングを持ち上げると絞り羽根がバラける。絞りユニットがバラけないように注意しながらひっくり返して取り出した。もちろん各部にマーキングして元通り組めるようにしている。

ひっくり返した絞りユニットの上に乗っかっている絞り羽根制御リングを持ち上げて外すと絞り羽根が現れる。

絞り羽根は8枚絞りですね。油が回っているのがわかります。

羽根を持ち上げてみますとやはり固着がありますがそこまで酷くはない。固着している絞りを無理やり操作した場合、羽根が曲がっている事がありますから羽根に変形がないかも確認しておく。今回ほベンジン浴をさせる程でもない為、ベンジンで拭きとるのみとした。羽根の油分がキレイになっていることを確認し元通り組み立てる、羽根の組立には帯磁しないピンセット(プラ、竹、セラミック、チタン製など)や竹串があると便利である。
あとは絞りユニットがバラバラにならぬ様に注意しながら内部鏡筒に戻せば絞りの整備は完了です。
ところが絞りこみ(プレビュー)が正常に動かない。

内部のカムなどの動きを確認してみると動作に違和感あり。

真鍮の絞り込み連動レバーが変形していたので修正したところ正常になりました。
絞りユニットの整備はこれでOKとします
レンズエレメントのクリーニング

前群は汚れてはいるが比較的キレイだしカビも無いので前玉のクリーニングのみ実施。

後群は後玉の傷みがひどそだがカビは無いみたい。後玉の表面のみクモリや小傷が多いので、レンズエレメントを取り外し水道水で洗浄した。レンズエレメントを取り出した場合は向きが分からなくならないよう注意する!

洗ったらめっちゃキレイはなりましたがカビ痕と思しきコーティングの傷みなどが若干残った。まあレンズ単体で400円相当の品なのでこれだけキレイになれば十分すぎるだろう。緑のアクロマチックコーティングもキレイに残っていますしね。
ヘリコイドの整備
あとは汚い外部鏡筒とカッチカチのヘリコイドのCLAですね。

ピントリングの内側には砂のようなものがたくさんあるので軽く掃除しておく。このレンズは内部鏡筒にスペーサーがあることから無限遠の調整はできないだろう。調整ができないためヘリコイドを元通り組めばピントが狂うことは無い。しかしヘリコイドを元通り組めなくなってしまうと元に戻すのは至難の業なのである。ここは経験がないと難しいが構造を理解し念入りにマーキングしておけばなんとかなるかも知れない。拙者の場合、ジャンクとは言えど素人がレンズに罫書き(キズ)を入れるのは気が引けるので、油性ペンでマーキングをすることにしている。

分解してみるとヘリコイドグリスはキレイだし状態は悪くない。これで60年以上未整備ということはないだろうしおそらく近年グリス交換されていると思う。今までヘリコイドの動きが悪いレンズを分解してみるとグリスは真っ黒に劣化していたり変な色になってたり、糊みたいになってたり、カピカピになってたりしていたのだがこのレンズのヘリコイドグリスはキレイだった。グリスを入れすぎてヘリコイドが激オモになっていたのでは?そんな気がするので、高粘度(ちょう度)のグリスを使ったしまったのかもしれない。このヘリコイドネジはピッチが細かいのでかなり柔らかいグリスが必要だろう。グリスの量を減らすとだいぶマシになったがやはり硬すぎたのでPTFEオイルを1滴だけ注油して様子を見ることにした。

グリスとは基油(潤滑油)と増ちょう剤を混ぜた物なので基油を増やしグリスを柔らかくする作戦である。相性が悪いと基油が分離したりして悪化する可能性もあるので真似しないほうが良いかも。これを読んでいる皆さんはこんな手抜きは絶対にやめましょう。私はもし問題が起きても再度バラせば良いのし、分解は好きなんで苦になりませんから問題なしです。
これで全ての整備は終わりましたので組み立てていきます。今回のレストアはヘリコイドのCLAで手を抜きましたが、いずれ気が向いたらフルオーバーホールしようと思います。
デジタルで簡易試写
デジタルで試し撮りとりあえずその辺を撮ってみました

ゴジラにピンを合わせたつもりでしたが…ちょっとピンボケです

レンズサッカー君登場レンズサッカー君のポートレートっすwピントは置いといて、ボケがキレイですね合焦ポイントもなかなかですね

いつもの二眼レフコーナーを撮ってみました。ボケはキレイな部類だと思います。

庭先でも撮ってみました。ミノルタらしい写りだと感じます。

開放だと少しグルグルしますが少し絞ればキリッとしますね 良いです!

柔らかいけど質感が出ていてボケがキレイ逆光ではフレアがあり、周辺は口径食がありラグビーボールボケですね
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あとがき


最後まで読んでいただき感謝です。
さて次回はこのレンズと一緒に入手したカメラをレストアしていこうと思います。乞うご期待w








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