おはこんばんちは、ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はAsahiflexⅠA型です。
まあ、所謂アサヒフレックス1a型なのですが、聞いた事ありますか?

てなわけで、まずはアサヒフレックスの素性についてみていきましょうかね
AsahiflexⅠA 型

アサヒフレックス?あまり聞かないないカメラですよね? 旭光学なら聞いた事あるでしょうか? それも聞いた事ない人でもペンタックスなら聞いた事ありますよね?
ペンタックスとは現在ではリコーイメージングのカメラブランドの一つとなっている訳ですが、かつては旭光学工業の製造するカメラブランドでした。紆余曲折があり現在はリコーのペンタックスな訳です。で、旭光学がPENTAXというブランド名の前に使っていたのがASAHI PENTAXそしてその前はAsahiflexだったのです。ざっくり整理すると、旭光学(いわゆるペンタックス)が初めて作った一眼レフに冠したのがAsahiflexというブランド名だったのです。
アサヒフレックスは一眼レフではありますが、一眼レフの特徴である三角屋根がありません。それはペンタプリズムを搭載したアイレベルファインダーではなくウエストレベルファインダーだったからなんですね。そしてAsahiflexの最終型となるⅡA型を基にマウントをプラクチカスクリューマウント化(所謂M42マウントっすね)して、ペンタプリズムを搭載しアイレベルファインダーとした「アサヒペンタックス」に世代交代したのです。

アサヒペンタックスという名称はAP系SP系そしてKマウントとなったKシリーズまでは刻印されており、スミ入れがなされた文字はくっきりと誇らしげでした。しかしMシリーズになるとASAHI銘にはスミが入れられなくなりPENTAXのみにスミ入れされるようになった。ちなみにAOCOマークは、
Asahi Optical Companyを図案化したもので六角形はおそらくペンタプリズムを表していると思うのですがペンタは5角形のことですからちょっと謎ではあります。

そしてついにMV-1のカタログからASAHIの文字が消え(本体にはASAHIの刻印あり)ME SuperからはASAHIの刻印も消滅しPENTAXのみになったのでありました。
と大幅に横道に逸れてしまいましたが、旭光学が開発したAsahiflexⅠ型(1952年)は国産初の一眼レフであったわけです。そして今回入手したⅠa型(1953年)はその改良型となります。どこが改良されたのはか他の詳しいページに任せるとして、見た目の違いはフラッシュソケットが二つになった事とシャッター速度が少しまとも(大陸系列)になった事、そして標準レンズがプリセット絞りになったことのようです。参考までに、Ⅰ型のシャッター速度は、
B, 1/20, 1/30, 1/40, 1/60, 1/100, 1/200, 1/500と独自の並びであったのに対してⅠa型では
B, 1/25, 1/50, 1/100, 1/200, 1/500という大陸系列と呼ばれる並になりました。
このカメラの大まかな特徴はいくつかありますが、一番の特徴はウエストレベルファインダーとビューファインダーを備えているところでしょう。ウエストレベルでファインダーは縦位置で構図を決め難いのでビューファインダーが搭載されたようですね。おかげでスナップ撮影に使いやすいと思います。
以後の一般的な一眼レフに当たり前にあってこのカメラにないものはアイレベルファインダー(ペンタプリズム:APで実用化)クイックリターンミラー(ⅡB型:1954年で実用化)、低速シャッター(ⅡA型(1955年)で実用化)ぐらいな気がしますから、最初にしてほぼ完成された一眼レフだったと言えるかもしれませんね。

てな訳で、なんだかちょっと不便でへんてこりんなカメラではありますが、国産一眼レフの黎明期の機体ってことでどうしても欲しかったAsahiflexシリーズだったんです。
今回たまたまⅠa型のジャンクを比較的安価で発見したので購入に至ったのでしたwww
状態を確認する
まずカメラのチェックといえば、シャッターが切れるか?って事なんですが、シャッターどころか巻き上げもできませんでした。レンズ交換式ですからレンズを外して覗いてみますと?

なんと!ミラーの奥にシャッター幕が見えないwww。まあSシリーズ以前のカメラはほとんどシャッター幕がダメですから想像はしていたんですけどね。

で、裏蓋を開けると、ちぎれたシャッター幕が出てきました。ちぎれたシャッター幕が残されていたのはラッキーでした。スリット金具が回収できますからね。
外観を見てみると、サビやアタリなどは見られず、貼り革はオリジナルコンディションを保っていて、なかなか良い状態です。ファインダーフードはスムーズに立ち上がり、ファインダーの見え具合も製造からの経過年数を鑑みれば良い状態だと感じました。ただルーペは汚いですね。てなわけで、カメラ本体の整備はシャッター幕の交換と光学系のクリーニングって感じかな?
レンズは、当時物の標準レンズであるTakumar50mmF3.5(プリセット絞り)が付いていました。

レンズエレメントの状態は、後玉に大きなカビはあるものの、まあまあって感じですね。ヘリコイドはスムーズですから過去に整備されたのかもしれません。問題なのは、絞り羽根にはかなり油の付着があるところですね。これはキレイにしておかないと絞り羽根が破損する恐れがありますので要整備です。
今回はとりあえず、カメラボディーを診ていこうと思います。
シャッター幕の状態確認
シャッター幕の状態を確認するためシャッターが巻かれているドラムを目指して分解スタートです。一眼レフでシャッター幕を確認するためにはミラーボックスを外す必要があります。まずは軍艦部を開けるところからですね。巻き上げノブの構造はバルナックっぽいっすけどロックネジはありませんでしたから、逆回転させるだけで外れました。シャッター速度ダイアルはイモネジで止まっていますが軍艦部に潜り込むような構造ですから、引き上げながらイモねじを外しました。巻き戻しノブは逆回転させるだけで外れますが巻き戻し軸はリングとねじ止めにより固定されていました。あと、銘板を外してみると隠しネジが2本ありました。これで軍艦部カバーは外れるはずですが硬くハマっていて外すのには苦労しました。

軍艦部カバーを外すとファインダーフードがパカッと開くので注意ですね。
お次はマウントエプロン部を外します。Sシリーズ同様、貼り革を剥がす必要はないので楽ちんです。マウントエプロン部の下にはシム(薄いワッシャー状のパーツ)があるので注意しながら外しました。

しかし4枚あるはずのシムは2枚しか付いていませんでした。(シムがないとフランジバックが狂うんだが…どうするかなぁ、困ったなぁ)
シムは場所によって厚みが違う場合がありますからマーキングが必須です。

そしてここでドラムに巻かれているシャッター幕の一部が見えました。しかしその状態は酷いものでした。なんだかゴムが一度溶けて再度固まったような感じで、まるでコップに結露した水滴のような状態になっています。こんなの初めて見たぞwww。そしてピンセットで擦ると表面は鮫肌のようにカチカチでガリガリと音を立てるような状態です。これはヤバいっすね(汗
気を取り直して、底カバーを取り外します。これも軍艦部カバーと同様に固くハマっていて思いっきり引っ張ったらぶっ飛びましたwww。

そして底からシムが2枚出てきました。これはラッキーですねwww
そしてやっとミラーボックスの取り外しです。

先にファインダーフードを取り外しコンデンサレンズ兼ピントスクリーンを外すと隅っこが欠けていました。うーむ。
Sシリーズではミラーボックスは上下2本計4本のネジで止まっていたので上部のネジを探すも見つからず、

結果的には下部の2本のネジだけで固定されていました。

そしてミラーボックスは知恵の輪状態で取り外すのにはかなりの時間を要してしまいました。

シャッター幕と関連パーツの状態を確認すると、ちぎれていたのは先幕で後幕は巻き上げドラムに巻きついたまま融着した状態でした。そして幕をピンセットで引っ張るとメキメキと音を立てる始末。取り外すのは絶望的ですな。

シャッター幕は融着した上にカチカチに固まっていましたから溶剤で溶かせないかとエタノールを垂らしてみるとドロドロに溶けてタール状になってしまいました。こうなったらカッターで切り刻む方法しか考えられません。できるなら原型のまま取り出して採寸したかったのですが無理っぽいですね。

小一時間かけてシャッター幕を切り刻みながら取り出してタール状のゴムを清掃しました。それでも4本のドラムは汚れがひどいので分解してドラムを抜き取り清掃する必要がありそうです

巻き上げドラムを抜きとるには巻き上げチャージ機構を分解しますが、小さいバネなどが使われているので飛ばさないように注意が必要です。また、ギアの噛み合わせ位置が決まっている場合がありますのでマーキングしながら分解していきます。

構造はSシリーズとは若干違っており、巻き上げドラム一体型のリボンローラーではなく、ソリッドな2本の巻き上げドラムの奥にシャフト状のリボンローラーがありました。

これはシャッター幕の取り付けが難しそうな構造ですね。
ここまで分解したらフルオーバーホールしようと思いましたが、スプールとスプロケットの抜き方が解らず断念です。なのでスプリングドラムを抜いたところで分解は終了とし、各部、各パーツをクリーニングしました。

2本のスプリングドラムは同じように見えましたが一応マーキングして取り違えないようにしました。
ミラーボックスの整備
合わせてミラーボックスの整備もここでやっておくのが良いです。(チリがでます)ミラーが上がった時にファインダーからの逆入射光防止用と思われる布があるのですが、これもシャッター幕と同じ素材でできており、経年でゴムがボロボロになって剥がすとあたりに飛び散ります。

キレイし掃除してからシャッター幕の切れっ端を程よいサイズにカットして貼り付けます。
この個体はコンデンサーレンズが欠けていたのでUV接着剤で補修しておきました。
ついでにもう一つの汚れ作業であるスリット金具の取り外しも、ここでやっちゃったほうが良いと思います。
スリット金具の取り外しとシャッタ幕サイズの検討
まずは古いシャッター幕の残骸からスリット金具を取り外します。Pentax Sシリーズではスリット金具のリベットはアルミ製だったので簡単に削り落とす事ができましたが、このカメラのリベットは真鍮製でした。YpuTubeで見るとアルミリベットの個体もあるようですね。

真鍮製リベットはドリルの歯が立たずセンターポンチが必要ですが、ポンチを打つと銅製のスリット金具にダメージを与えるおそれを感じたので、

電動ルーターに0.5mmほどのビットをつけて真鍮リベットの真ん中に窪みをつけた上でピンバイスで削り落としました。

そして2本のスリット金具を無事取り外すことができました。
シャッター幕の作成
シャッター幕の正確なサイズは分かりませんから、シャッター幕の破片やスリット金具、そして過去に作成したSシリーズのシャッター幕サイズからおおよそのサイズを導き出し少し余裕を持たせてカットしました。

最初は余裕を持たせて、現物合わせで切り詰めていきました。

直線部分はロータリーカッター

コーナーなどはアートナイフプロの曲線刃で押し切りします。
アートナイフプロは購入時は3種類の刃が付属していてカメラの修理にも非常に便利です。また別売りでいろんな刃が売っているのでおすすめですよ。

幕を切り出してスリット金具を接着します。

これでシャッター幕は出来上がりです。
巻き上げチャージ機構の組み立て
ここで折り返し地点です。とりあえずシャッター幕の取り付けができるところまで組み立てます。

スプールを分解することはできませんでしたから、スプールの逆回転を防止するスプリングクラッチのみ取り外してグリスアップしておきました。拙者は2本の巻き取りドラムのみここで組みましたが、組み立てることができるところまではここで組み立ててしまったほうが良いと思います。2本のローラーを忘れずに差し込み関連パーツを組み立てていきます。軸受には忘れずにグリスアップしておきます。スプリングドラムは非分解構造のようでしたから軸の部分のみグリスアップしておきました。これでシャッター幕を貼り付ける準備段階まで組み立てることができました。
シャッター幕の取り付け
さてやっとシャッター幕の取り付けです。

このカメラは巻き上げドラム側にもシャフト状のローラーがありますからリボンやシャッター幕が通る場所を間違えないようにします。また巻き上げチャージギア関連部品は全て取り付けてからシャッター幕を貼り付けたほうが良いです。

拙者はセレクターギアストッパーを取り付け忘れてシャッター幕を貼り付けてしまい、貼り直すハメになりました。
ミラーボックスとコンデンサレンズの取り付け
次にミラーボックスを取り付けます。

ミラーボックスは外す時も苦労しましたが、取り付けにも苦労しました。レリーズボタンと繋がるアクチュエーターロッドが邪魔なんですよね。


コンデンサーレンズは下経ていた破片をUV接着剤で貼り付けてから組み立てました。欠けていたのは見えなくなる部分ではありますが、ピントなどに影響する可能性がありますから慎重に貼り付けました。
シャッター速度の調整(スプリングドラムのテンション調整)
ここでシャッター速度の調整をします。拙者はアプリとセンサーを組み合わせた簡易的なシャッター速度テスターを使っていますが素人レベルではこれで十分だと思っています。

ですがこのカメラのシャッターはなかなかいい感じにはなりませんでしたから、かなり妥協したと言わざるを得ませんねw(測定結果は上写真の通り誤差が大きい)
とはいえ調子は上々でネガで撮るなら問題のない誤差かな〜と思います。
調整が終わったら軍艦部カバーを取り付けて最後にダミーフィルムで各部の動きを確認したらボディのレストア完了ですね。
あとがき


最後まで読んでいただき感謝です。
さて次回はAsahiflexに付属してきたTakumar50mmF3.5をクリーニングして試し撮りをします。乞うご期待w
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