ジャンカメハンターのぐりやんです。
本日の獲物はアイレス写真機製作所のカメラの中でもおそらく一番人気があるAires35ⅢCです。
あのLeica M3にそっくりな事で有名なカメラですね。

このカメラは前々から狙っていたのだが、どうらや人気があるようで中々手に入れる事ができなかったんですよね。ところが先日某中古屋のジャンク棚で発見し、激安だったので狩ってきたと言うわけなのです。一応購入前には手に取って軽く状態確認しましたが、直りそうだと踏んで購入に踏み切りました。
Aires 35 IIICというカメラについて
Aires 35 IIICは、1957年に日本のアイレス写真機製作所が製造・販売した、35mm判レンズ固定式レンジファインダーカメラです。このカメラの特徴はなんといってもそのデザインで、ライカM3の影響を強く受けたと言われています。搭載レンズは、H CORAL 45mm F1.9(4群6枚構成)または P CORAL 45mm F2.4(4群5枚構成)の2種類が存在します。拙者が購入したのは前者です。精工舎MXLというレンズシャッターを搭載し、ライトバリューシステムに対応しています。
アイレスのレンズ名の前についている記号はレンズエレメントの枚数を表しています。
無印=3枚・Q=4枚・P=5枚・H=6枚・S=7枚
って事になります。このカメラの場合Hなので6枚玉って事になるわけです。

連動距離計を内蔵したファインダーは、アイレスのお家芸であった採光式ブライトフレームを採用し、さらにパララックス自動補正機能も搭載しています。巻き上げは、レバーによる1回巻き上げですが分割巻き上げはできません。巻き戻しはクランク式でクラッチ内蔵式なので巻き上げても回転せず使用時のみクラッチが接続され巻き戻しが可能となります。巻き上げは赤い十字の指標が回転することによって確認することができます。いやー凝ってますねー。

巻き戻しクラッチはライカM型のように前面のレバー(R)により操作します。このレバーを逆に(D)操作すれば多重露光機能も可能です。
購入時の状態

まず外観は、巻き上げレバー横にアタリがあるほかは、まあまあキレイです。

鏡筒の先端についているシャッター銘板の位置(向き)がなんだか変です。かなり位置がズレちゃっているようです。
動作は?というと、シャッターは粘っておりますし、絞り開口部の形状がオカシイ、おそらく絞り羽根が外れているか、若しくは損傷があります。そしてピントリングを回してもレンズが無限遠まで回らず二重像も無限遠までいきません。巻き上げはできますが、レバーがスッカスカで、巻き戻しがスムーズではありません。三脚座(ネジ)がカポカポと遊んでいます。
てな訳で、ジャンクと言うよりも完全な故障品と言えると思います。
ヘリコイドとレンズシャッターの分解と整備
レンズ銘板を外してみると、銘板のズレは位置を合わせてイモネジを締めるだけで直りそうです。
一番の問題点は絞り羽根でしょう。レンズシャッター機ではレンズシャッターユニット内に絞りを内蔵していますから、レンズシャッターユニットを目指して鏡筒前部から分解スタートです。

前群ユニットを外したら、なぜか銅の金具が緩んでいました?
ネジ頭のキズも多いし分解歴が有るのは間違い無いですね。

そして絞り環の回転を絞り羽根に伝えるカムが変形していました。絞り羽根開口部の形が変なので、おそらく絞り羽根が1枚脱落していると思います。こういった故障は古いレンズシャッター式のカメラでは意外と多いのですが、重要なのは無理に動かして壊してしまっているという点なのだ。そんな訳なので、動かないカメラの操作部を無理に動かすのはやめましょう。無理矢理動かすとロクな事になりません。

ま、予想はできたいたんですが前からでは絞りバネに到達することはできませんでした。
このカメラ本来ならば貼り革を剥がして前板を外すのがセオリーみたいですが、アイレスの貼り革はカピカピになっている事が多いのでおそらく剥がすと粉々になってしまうでしょう。なのでできる事なら貼り革は剥がしたくないんですよねぇ。調べていくうちに、アパーチャー側からレンズシャッターユニットを外すことができれば、レンズシャッターユニットを取り外せるらしいことがわかってきました。YouTubeでは先細ラジペンで後玉を外している人がいたが同じように後玉を外すことはできませんでした。そこでカニ目レンチを作るとにしたんですよね。

手作りカニ目レンチの材料は矢崎化工のイレクターパイプH-300、外径が27.5mm・内径24mm・鉄パイプ厚0.8mm(実測)なので00番シャッターの固定リングにはちょうど良いと思います。
パイプの径は28mmでアパーチャーの高さは24ミリほど…
24mmの隙間に28ミリのパイプを挿入する必要があるため複雑な形状のカニ目回しになりました。

そんなこんなで何とかレンズシャッターユニットを取り外す事ができたのであったwww
レンズシャッターユニットの分解整備
レンズシャッターユニットは多くの問題を抱えていようだった。シャッター羽根の調子も悪いし、絞り羽根も正常ではない(おそらく羽根の脱落)そんな訳でレンズシャッターユニットの全部(メカ部)はバラさずに全後部を分離して後部の羽根部のみのオーバーホールに挑戦してみることにした。シンクロソケットが邪魔なので取り外したところ前後を分離することができた。
ここまでの分解でシャッター羽根が現れた。

シャッター羽根の隙間には油分が侵入して固着する寸前であった。
次は絞り羽根をバラす。押さえ金具はネジロック剤で固く固定されていたのでエタノールを注入してから外した。

すると、絞り羽根が一枚外れていて、その他の絞り羽根はそれら同士が油で張り付いていた。分解すると羽根にはコッテリと油が付いていた。この油が人為的なものかは不明だが、ネジの頭のキズから想像すると分解出来ずに諦めて油を差したのかも知れない。絞りカムの変形は、お互いに張り付いて動かなくなった絞りを無理矢理操作しようとしたことが原因だろうから人為的な破壊でろう。

変形した絞りカムのレバーはイチかバチか、チカラワザでググッと元に戻した。
無事元に戻ったが、絞り操作カム基部のドーナツ状の部分に変形があるので取り外して修正した。

全ての羽根はベンジンで洗浄した。
乾いた羽根を元通りレンズシャッタユニットに組み込めば羽根の整備は完了です。シャッターのメカ部はフリクションが発生する軸受などに微量注油してシャッター速度を測定し良かったので、レンズシャッターユニットは完成ですね〜
ピントリングズレの原因探求と修理
ヘリコイドユニットとピントリングはちょっと変わった構造で、2本のネジと金具で挟み込んで連結されこれを緩めることによって無限遠の調整などができる構造となっていました。

一本の真鍮ネジとピントリング裏の真鍮金具、そしてもう一本の真鍮ネジとピントノブ金具でヘリコイド外環を挟み込んで固定しているのです。
これはあまり良い設計とは言えませんね このネジが緩んだためにピントリングとヘリコイド外環の固定が緩み、ピントリングが滑ってズレが発生、それが原因でレンズが無限遠までいかなくなってしまったんでしょう。これは組み立て調整でネジを締めれば治りそうです。

ここまでバラしたんで、ついでにヘリコイドの分解整備もしときます。
ヘリコイドの分解整備
ヘリコイドユニットはマルっと外せる構造でしたので、外して分解・洗浄・グリスアップします。ヘリコイド外環を先に抜きます。ここは1条逆ネジでした。バラしたヘリコイドの溝には劣化したグリスが詰まっていますから超音波洗浄しました。

乾いたら組み立てますがグリスを入れすぎるとヘリコイドが固くなるので適量を塗布します。グリスの塗りすぎには注意ですが、腐食防止と潤滑のため必ず塗っておきます。これでヘリコイドユニットの完成です。ヘリコイドネジを抜くときは、元通り組めるように十分にマーキングをしておきます。私はもしもを想定して、一旦最後までねじ込だ位置を必ずマーキングしておきます。
このカメラのヘリコイドネジは10条(11条かも)とかなり多いので組み立ては難しいです。とにかく十分マーキングして完璧に元に戻せるようにします。
レンズのクリーニング
まずオキシドールで拭いてから、無水エタノールで仕上げていきました。
前群のレンズは、まあまあキレイになりました。

が…周辺にひび割れっぽいヤツが見えています。コバ塗りの劣化ですね。後ほど修正します。

後玉の周辺部にひび割れっぽいのが見えます。こちらはバルサムの劣化ですねぇ。まあこれぐらいなら問題ないので、良しとしましょう。
第2群背面のコバ塗りの剥がれたところをタッチアップしておきます。塗料はいつもの100均アクリル絵の具ですね。
レンズシャッターとヘリコイドの取り付け
全てのパーツの整備が終わりましたのでボディにヘリコイドを取り付けます。レンズシャッターユニットの取り付けにはかなり苦労する羽目になってしまいました。外す時も狭くて苦労しましたが、つける時も狭くて苦労するのは当たり前と言えますねぇ。どうにも上手くいかないので、3Dプリンタでレンズシャッターユニットのリングを回すための治具をで作りました。


狭い隙間の奥の大きなリングを回すため複雑な形状になっていて、ツメの部分は強度を確保するため金属製です。この治具では強度不足で締めつけはできませんから締め付けは前回作った金属パイプ製のカニ目回しで行いました。
結果的に上手くいきましたがとても苦労しました。
ファインダーのクリーニング
軍艦部を分解します。巻き上げレバーがスカスカだったのはレバーを取り付けているカニ目リングの緩みが原因でした。軍艦部カバーを固定しているのは左右2本のネジだけでした。ネジを抜いたらカバーを上に引っ張るだけで外れます。接眼レンズの内側にプラスチック製の黒いリングが入っていました。

対物レンズの枠、ファインダーの上カバーを順に外します。接着してあるので注意して外します。これでファインダーの光学部品にアクセスできます。

ビームスプリッター(ハーフミラー)は入射面のみ拭きました。背面側は金メッキの蒸着面で剥がれる危険性があるのでエアブローのみです。アイレスのハーフミラーは品質が良く劣化しにくいらしいけど…触らぬ神に祟りなしです。その他のミラー類も反射面(蒸着面)はエアブローのみに留めました。未だクモリは取れていません。
丸い筒の中に上下像を調整する円形プリズムが入っていました。それが汚れていたのが二重像が薄かった原因でした。

なので丸い筒を取り外し内部の丸いプリズムを拭き上げると二重像の見えは改善しました。

このカメラのパララックス自動補正機構は、ブライトフレームのマスクを糸で引っ張っているのがオモシロイですよね〜
あとは、ケーブルレリーズ用の穴の中のコマが固着していたので、分解してグリスアップしておきました
。
しっかし、このファインダーはコストがかかっていると思います。ファインダーカバーは紙製の物も多いですがこれはしっかりとした金属製ですし。

軍艦部カバーのアタリは巻き上げレバーと干渉しますから少し板金しました。当て木をして軽く叩きました。しかし板金に深追いは禁物です。巻き上げレバーとの干渉が解消したところで終了しました。
巻き戻しクランクを整備
巻き戻しクランクに、当初は気がついていなかった不具合がありました。巻き戻しクランクの回転が渋いでのす。なので、分解すると、回転が渋い原因は単なるグリス切れでした。

掃除してグリスアップしたらスムーズに回転するようになりました。
ちなみに、クランク本体はカシメ組み立てで分解できない構造でしたのでご注意あれ。
あとは軍艦部カバーを閉鎖は構造が複雑なのでちょっと手間がかかります。巻き戻しシャフトと巻き上げ表示シャフト(赤い+が回転するやつ)をそれぞれの穴に差し込む必要あり、竹串を使って上手いことはめました。
三脚ネジ穴
三脚穴の状態を確認してみる。

2本のネジで止まっていたであろう三脚穴にネジは付いておらず遊んでした。内部を見渡すと破断した真鍮ネジの残骸を発見。

おそらく三脚使用中に折れたのだろう。しかしながらカメラの中でもいちばん力が掛かる三脚ネジ穴の取り付けをたった2本の真鍮ネジでってどうなのだろうか?台座の形状もよろしくないですよね〜?ここは設計が悪いですね。

ネジはM2の並目(ピッチ0.4)っぽいジャンクネジを漁ってみると合いそうなのが見つかった。長過ではあるが、どうやら問題はなさそうです。
バッチリ固定されましたが、この構造から三脚はあまり使いたくないですね。
底蓋ロックも開閉ノブがゆるゆるだったので分解して整備しておきました。
鏡筒の組み立て
あとは鏡筒を組み立てるのみ。シャッター速度環と絞り環は、ライトバリューシステムという機能を搭載しているので連動して回ります。

購入時は鋼球が外れていたためクリック感はなく連動もしませんでしたが、鏡筒内に落ちていた硬球を元の場所に組み込んで見ると直りました。

変な位置で止まっていたシャッター銘板は絞り指標がビシッと揃うように合わせてイモネジを締めます。キチンと揃うと気持ちが良いですねー

このカメラ買った時に付いていた超厚枠のY2フィルターが妙にかっこいいんです!
Walz製のY2なんですが、見たことないやつで、専用のフードが付きそうな感じですねー
黄色いガラスはどうやらモノコートされているようです。
妙にかっこよくて厚枠がちょっとだけフードの役割もしそうな感じです。
内面反射対策と最後の微調整
実は整備する過程で気になっていた事があるんです。それは内面反射なんですね。
そこで新兵器の投入です!

その界隈で有名な、真・黒色無双ですね。

塗って見ましたがなかなか良さそうです。(隅っこのテカっている部分は未乾燥)これ、エアブラシ塗装推奨らしいですから、次回試してみようかな?
最終チェックとコンディション
最後のチェックをしていると二重像に縦ズレがありましたので通常モード(分解せずにやる)縦ズレ調整をやってみます。
まず、アクセサリーシューの止めネジを外して蓋を開けます。するとファインダーを整備した時に見えていたプリズムの筒が見えます。

中に見える手前の止めネジを緩めたら筒の穴にドライバーなどを突っ込んで回転させれば縦ズレが調整可能です。ここは竹ぐしなどは使わない方が良いでしょう。
二重像がピタリとあったら止めネジを締めて、蓋を閉めれば出来上がりですね。
粘っていたシャッター、羽根が外れていた絞り、回りにくかった巻き戻しクランク、無限遠までいかなかったピントリング、外れていた三脚穴などなど全てOKになりました。
シャッター速度の測定結果は
1 ⇨ 1.14
2 ⇨ 1.95
5 ⇨ 5.14
10 ⇨ 8.93
25 ⇨ 26
50 ⇨ 44
100 ⇨ 82
250 ⇨ 227
500 ⇨ 371
平均して10%ほど遅いですが、これくらいなら優秀な方だと思います。
これで使えなかったジャンクカメラが使える様になりました
ファインダーカバーガラスに若干傷みがあることや前玉に小キズがあることから、並品レベルの実用品に認定です。
試し撮り
まず、レンズの整備が終わった段階でデジカメにマウントしてレンズの写りを確認してみました。レンズをどのようにマウントしたかについてはYouTubeをご覧くださいませ
まずは周辺落ちが大きそうだったので絞りを変えて空を撮ってみた




開放ではかなりの周辺落ちがあるがF8でほぼ解消F16では完全に解消している




ぐるぐるや後ボケ、口径食などを確認するため植え込みを撮ってみた。やはりグルグルが発生し口径食もあるがなかなかエモい写りだと思う。
そしてモノクロフィルムでの試し撮りの結果






カメラ:Aires35ⅢC H CORAL 4.5cm/F1.9
フィルム:Arista EDU Ultra100 (100ft→18枚装填)チェコ共和国製
現像:D-76処方(自家調合)20℃ 6分 定着:ラピッドフィクサー 5分
スキャン:NIKON COOLSCAN Ⅴ ED
まあ、よく写るレンズですし中々面白いボケを見せてくれます。クセ玉っすね。
さすが4群6枚っすね。
あとがき

最後まで読んでいただき感謝です。
最近ジャンクカメラが増えちゃって困っていますw
次はどのカメラを復活させて写真を撮ろうかな〜www





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